日本劇作家協会・日本劇団協議会の担当者諸氏の苦労が実って、統一モデル契約書が誕生した。以下では、モデル契約書の特に重要な部分に絞って内容を解説する。
モデル契約書は全部で3種類が作られた。(1)執筆委嘱・上演用(2-1)既存作品上演用(独占型)、(2-2)既存作品上演用(非独占型)、である。どの契約書も、上演料の金額や上演回数などは空白になっており、当事者で話し合って決めた数字を書き込む形である。空白欄を残すともめごとの原因となるので注意したい。
(1)は、新作の執筆を依頼して、その戯曲を上演する場合の契約である。 戯曲の著作権は劇作家にあり(第4条)、劇団は勝手に内容を変更して上演することはできない(第3条2項参照)。反面、劇団は当初3年間は日本語圏内での独占的上演権を持つことができる(第7条2項)。執筆委嘱料・上演料は、決められた上演回数までは定額である(第8条1項)。期間内にその回数を超えて上演すると再演となり、1ステージあたり規定の上演料が支払われる(第8条3項)。当事者は、作品プロット、第1稿、完成原稿それぞれについて、提出期限を決めることができる(第2条)。期限が守れない場合、劇団は猶予期間を与えて催促した後、契約を解除することができる(第11条1項)。この場合、劇団は委嘱料・上演料の返還を受けた上で(第11条2項)、なお損害があればその補償を請求できる。ただし、劇作家の損害賠償責任には上限を設けることができるので、上限金額は必ず記入しておくべきである(第13条2項)。反面、劇団側が上演を中止した場合等には、劇作家は契約を解除の上、それまでの業務に対応する委嘱料・上演料をただちに請求できる(第12条2項)。テレビ放映等の二次利用については、劇作家と劇団が別途協議して決めることになっており、劇団は独断でテレビ放映等を許可することはできない(第10条1項)。
これに対して、(2-1)と(2-2)は、既存の作品を上演する場合の契約である。 このうち、(2-1)は独占的な上演権を劇団に与えるものであり、決められた期間中は他の者に上演を許可してはならない。他方、(2-2)は非独占的な上演許可であって、作家は他団体に上演を許可して構わない(共に第1条2項)。執筆の委嘱がないことを除けば、ほかの部分は(1)の契約とほぼ同じである。
最後にもっとも重要なことだが、モデル契約書は、あくまでも当事者が内容をよく読んで自己責任で使用するものである。使用は義務的ではないし、気に入らない所はどんどん書き直して使ってよい。モデル契約書は、日本劇作家協会と日本劇団協議会が共同で会員に紹介できる契約書の1モデルである。逆に言えば、どちらの団体にとっても100%満足の行くものではない。どちらか一方にとって100%な内容であれば、二団体が合意などできる訳はないのである。
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