ハラスメント防止ガイドライン
ハラスメント事案の対応要綱
(別ページ)


一般社団法人 日本劇作家協会 
2022年9月12日公開 
2023年3月25日改訂 


ステイトメント「演劇の創造現場からあらゆるハラスメントや性加害をなくしていくために私たちは発言し行動します(2022年5月13日付発表)


ガイドライン公開にあたって ── コンプライアンス委員長 関根信一
 「ハラスメント防止ガイドライン」と「ハラスメント事案の対応要綱」の改訂版を公開しました。2022年9月に発表したガイドラインに、会員意見を募集するなどして修正を加えたものです。
 実際の運用に関しては、体制が整い次第、申告フォームを設置しますので、今しばらく時間をいただけたらと思います。それまでは、2020年より運用中の「セクシュアル・ハラスメント事案の対応要綱」に基づいて対応します。申告フォームもそちらの使用をお願いします。
 劇作家協会ではハラスメント防止啓発ワーキンググループをつくり、会員の意識向上に努めています。2023年1月には、役員・運営委員らを対象とした「リスペクトトレーニング/ハラスメント防止講習」を行いました。一般会員向けの講習も計画中です。
 演劇の現場からあらゆるハラスメントをなくしていくための活動を引き続き行っていきます。(2023年4月25日)
 

【はじめに】
 このガイドラインは日本劇作家協会(以下、劇作家協会)の会員、職員、及び事業に関わるすべての人に対し、ハラスメントへの理解を促すことで、その防止に努め、劇作家協会の事業においてハラスメントのない環境を形成していくことを目的として策定するものです。
 また当協会が対応しうる範囲を明確にすることにより、適切なハラスメント対応がなされることを目的とします。
 なお、ガイドラインに沿った具体的な対応方法については、別途、対応要綱にまとめます。
 
1.劇作家協会がハラスメント対策において目指すもの
2.ハラスメントの定義と防止目的、ハラスメントに対する姿勢
3.関係性の基本的な考え方
4.協会の事業に関連して生じうるハラスメントの例
5.ハラスメント事案への対応と体制
6.ハラスメント防止に向けた取り組み
7.
ガイドライン及び対応要綱の改訂について

8.メッセージ
9.確認書

別ページ.
 ハラスメント事案の対応要綱

 ガイドラインと対応要綱作成によせて


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1.劇作家協会がハラスメント対策において目指すもの
 
◯ 劇作家協会の会員、職員、及びその事業に関わるすべての人が、人権を守られ、自分の意思で活動することができる。
 
◯ 劇作家協会の会員、職員、及びその事業に関わるすべての人が、属性や思想信条によって差別されることなく、互いに尊重し合い、人として対等に、意見交換や対話を行うことができる。
 
◯ 劇作家協会の会員、職員、及び事業に関わるすべての人が、身体的精神的に安全な状況で過ごすことができる。


2.ハラスメントの定義と防止目的、ハラスメントに対する姿勢
 
〈ハラスメントの定義〉
ハラスメントとは、行為者の意図とは関係なく、他の者に身体的又は精神的苦痛を与える言動や、尊厳を傷つける行為の総称です。当該言動等により、身体的又は精神的苦痛を与えられ、事業における活動環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等事業における活動等を行ううえで看過できない程度の支障が生じることをいいます。
 
〈ハラスメントの防止目的〉
 ハラスメントが発生すると、個人の尊厳と人格が傷つけられ、安全に過ごすことができなくなり、健全な創作活動に支障をきたします。また、ハラスメントの発生に至らなくても、自由で対等な対話ができなくなっている環境では、活動が萎縮し、組織運営上の問題が起こりやすくなります。よって、日本劇作家協会では、ハラスメントの防止と共に、ハラスメントが起きにくい環境作りに取り組みます。
 
〈ハラスメントに対する姿勢〉
 日本劇作家協会は、起きてしまったハラスメントに厳正に対処します。その目的は、被害者の尊厳の回復を目指すことと再発の防止です。行為を行った者への攻撃や排斥が目的ではありません。

 
3.関係性の基本的な考え方
 ハラスメントを防ぐためには、相手との関係性について各人が認識することが重要です。ハラスメントは対等な関係でも起こり得ますが、多くは優位性を背景に行われます。
 
(1)会員同士について
 すべての会員は自らの自由意思により入会しており、会員同士は対等の関係です。しかし、役職がある場合はもちろん、年齢、キャリア、性別等により、様々な優位性が生じます。優位性はかならずしも年齢が上の方が上、キャリアが長い方が上と決まっているわけではありませんが、年齢が下の人やキャリアが短い人に対するときは、自分が優位的な立場になる可能性が高いと考えるべきです。
 また、協会が関わる事業のために、会員の作品や公演を選定する役職にある者は、一般の会員に対し大きな力を持つことになります。
 
(2)会員と、外部の人について
 協会主催の事業で外部のスタッフや俳優に仕事を委託した場合、事業担当者はその人に対して優位的な立場になりえます。また、各事業への参加を一般公募した場合、会員は参加者に対して優位的な立場になりえます。特に育成事業における講師や、戯曲賞の審査員、キャスティング等の権限を持つ担当者等は、大きな力を持っています。
 また、協会が仕事を委託した者が、一般の参加者等に対して優位的な立場になることもあります。協会が仕事を委託した者の言動については、委託を行った事業担当者にも責任が生じる場合があります。
 
(3)会員と事務局について
 事務局は、協会の財務、事務等を担当し、事業の多くに関わります。事務局は業務上、知りうる情報が多いため、一般の会員に対し優位的な立場となる場合があります。また、事務局の業務を会員等に委託する際にも、その者に対し優位的な立場となりえます。
 一方、各事業の担当者(会員)は、事業の主催者として運営における意思決定の中心となるため、実務を担当する事務局に対し優位的な立場となりえます。

 
4.協会の事業に関連して生じうるハラスメントの例
 ある行為がハラスメントにあたるかどうかは、状況や業務上の必要性を踏まえて、慎重に判断されることが求められます。
 ただし、以下に挙げられていないからといって、ハラスメントに該当しないというものではありません。

〈ハラスメントに該当すると考えられる例〉
◯ セクシュアル・ハラスメント
 
対価型
・戯曲指導の対価として、身体接触や性的関係を求める。
・協会での立場を利用ないしほのめかして性的な関係を要求する。
・交際を断られ、業務上必要な情報を与えない等の嫌がらせをする。
 
環境型
以下のような言動で、身体的又は精神的苦痛を与えられ、事業における活動環境
が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等、事業における活動等を行ううえで、看過できない程度の支障が生じること。

・ワークショップ等で、本人の同意なく、意識的に身体に接触する。
・会議やワークショップ等において、必然性なく性的な会話をする。
・深夜の指導や、他人の目に触れない環境での個人指導を強要する。

・性別に関する蔑視発言をする。
・性的属性を決めつけるような呼び方をする。( 例、女流劇作家、ねえちゃん、女史、おじさん、おばさん、姐さん等)
・ジェンダーロール(社会生活において性別によって固定化される役割)に基づいた発言や役割分担、指示を行う。(例「女性ならではの視点で論じろ」「男ならわかると思うけど…」等)

・性的な噂を意図的に流す。
・性的指向や性自認を、本人の許可なく、人に話す。
・性的指向や性自認を詮索したり、からかったりする。

◯ パワー・ハラスメント
 
身体的な攻撃 ※暴行・傷害は犯罪行為です。
・肉体的な暴力をふるう。
・殴る真似をしたり、壁や机等を叩いたり蹴ったりして、威嚇する。

精神的な攻撃
・作品の指導と称する等して、人格や能力を否定する。
・出身や学歴、性別等、業務と無関係なことを非難する。
・ミスをしたことを必要以上に厳しく叱責したり、長時間叱責したりする。
・相手に罪悪感を抱かせるような言い方をして、相手をコントロールしようとする。
・他の人のいる前で、大声で威圧的な叱責をしたり、暴力的に意見を遮る。
・大勢が見ているメーリングリストに個人を罵倒するメールを流す。
・脅迫をする。※犯罪だとみなされない場合でもハラスメントにはあたります
・飲み会への参加や、飲酒を強要する。
・やめてほしい行為であると告げられても、やめずにくり返す。

人間関係からの切り離し
・関係している事業について、共有すべき必要性・合理性があると明らかに認められる情報をあえて教えない。
・ワークショップ、セミナー、講座、会議等の間、特定の参加者を無視する。
 
過大な要求
・無理をすればできるということを遂行可能と見なし、作業を強要する。
・遂行不可能だと告げられても、やる気や理解の問題にすり替えて聞き入れない。
・実際に業務を行う者の意見を聞かずに改善案を押しつける。
 
過少な要求
・能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや、仕事を与えない。
・それまで行っていた業務を、必然性なく奪う。
 
個の侵害
・業務上の必要なく、個人のプライバシーに関わることをしつこく聞く。
・意見を表明したくないとしている事柄について、意見の表明をしつこく迫る。
・個人の秘密を暴露する。
 
◯ マタニティ・ハラスメント等

・妊娠したこと、子育て中、介護中であることを理由に、必然性なく、本人の同意なく役割を奪う。
・妊娠している者に、本人の意に反し、過度な業務をさせる。

◯ 差別
・差別発言をしたり、差別を扇動する。(容姿、恋愛、結婚、年齢、性別、性的指向、性自認、人種、民族、国籍等について)

◯ その他
・権力勾配を利用して他人の作品を盗用したり、同意なく公開したりする。※作品の盗用は犯罪行為です。


5.ハラスメント事案への対応と体制
(1)協会が措置を講じる対象・範囲
 
〈日本劇作家協会が措置を講じる場合〉
 日本劇作家協会の業務に関連して、協会の役員・会員・職員、または協会の委託を受けて業務を行う者等がハラスメントを行った場合、日本劇作家協会は、被害の更なる防止のために必要な措置を講じ、被害が発生した場合に必要な救済措置を講じます。
 
〈上記以外の場合〉
 上記にあてはまらない行為について、協会は調査、被害の更なる防止等のための必要な措置等を講じる義務を負うものではありません。
 
(2)ハラスメントに対応する組織体制
 日本劇作家協会は、以下の3つのグループによってハラスメントに対応します。
 
a)ハラスメント対応委員会
・理事会直属のハラスメント対応委員会は事案ごとに対応チームを編成し、個別事案の受理・聞き取り・調査を行い、理事会に報告書を出す。
・対応チームには弁護士、臨床心理士等の専門家を含み、関係者への聞き取り・調査等は専門家の監修のもとに行う。
・個人に対する問い合わせや攻撃を防ぐため、メンバーの個人名は基本的に非公開とする。ただし、事案の当事者が対応にあたることのないようにし、申告者にはその旨がわかるようにする。
・事案の対応に進む場合は会長に報告する。
・協会による措置が必要な場合、報告書と共に、措置案を理事会に提案する。
・調査中の事案へは、会長、副会長、理事、役員、事務局等も介入しないが、対応チームが必要とした場合は、理事会に報告や相談をすることができる。また、トラブルが発生した時は理事会に速やかに報告する。
・ハラスメント対応委員会のメンバーは守秘義務に関する誓約書にサインする。また、ハラスメントの対応方法について研修を受ける。
・理事会の決定に不服等がある場合は、問い合わせることができる。
 
b) 理事会
・対応チームが作成した報告書と措置案を元に、協会としての措置を行う。
・対応の際は守秘義務に関する誓約書にサインする。
・理事はハラスメントの対応方法について研修を受ける。
 
c) 総務部コンプライアンス委員会
・主に、ガイドライン・事案対応基本要綱の作成や改訂、勉強会等の会員に対する啓発活動を行う。
・個別事案の対応は行わない。
・ガイドラインの改定や事案対応基本要綱の作成の為に必要な場合にかぎり、個人は特定できないようにした上で、個別事案の検証をすることができる。
 
(3)各グループの任命方法
 上記の各グループは、以下のようにして選任されます。
 
a)ハラスメント対応委員会
・理事会がメンバーを選出。
・任期は2年。最大3期。
 
b)理事会
・会長、副会長、理事は、それぞれ定款に則って選出される。
 
c)コンプライアンス委員会
・総務部が理事会承認の元、委員長を任命する。
・総務部長と委員長が協議して委員を任命する。
 
(4)実際の対応方法について
対応方法については、「ハラスメント事案の対応要綱」を参照してください。
 
(5)協会が講じる措置の例
 理事会は、対応チームからの調査報告に基づいて措置を決定します。
 
〈措置の例〉
・加害者を被害者に接触させない
・加害者に被害者への謝罪を求める
・行為者支援プログラムへの参加を求める

・ハラスメントが起きた事業組織のあり方の見直し
・事業委託のあり方の見直し

・役職就任の期限付き停止
・所属委員会からの解任
・協会事業への参加の期限付き禁止
・協会に関わる活動の期限付き停止

(上記は措置の一例であり、全てではありません)

6.ハラスメント防止に向けた取り組み

(1) ハラスメント防止啓発ワーキンググループをもうける。
 
(2) 理事会、評議委員、運営委員むけにハラスメント防止のための講習を行う。

(3)上記に限らず、ハラスメント防止に向けて継続した取り組みを行う。


7.ガイドライン及び対応要綱の改定について
 当ガイドライン・対応要綱の改定はコンプライアンス委員会が行い、理事会に諮り承認を得ることとします。


8.メッセージ
〈被害を受けた方へ〉
 協会事業においてハラスメントを受けた場合は、こちらのフォーム(URL)から申告することができます。
 相手の行為により尊厳を侵害されたとき、傷ついているから止めてほしい旨述べたり、やりたくないことを断ることは、自分勝手なことでも冷酷なことでもなく、自分を大切にすることです。周りのために自分が耐えるしかないと感じる必要はありません。
 
〈被害を目撃した方へ〉
 被害を目撃したときは、気軽にハラスメントであることを指摘しあえる環境が理想的です。ハラスメントであることを指摘するのが難しければ、「いまのは少しリスペクトが足りませんでしたよ」等の言い方をすることもできます。
 なお、被害を目撃することで、直接被害を受けた人と同等に傷つくこともあります。その場で言葉が出てこない、動けない、等の状況に陥っても、自分を責める必要はありません。その場合は、当事者として被害を申告することができます。
 
〈加害者とならないために〉
 自分がどんな力を持っているのかを把握し、それを適正に用いることができているかを確認しましょう。
 「やめて」と言われたときは、それが例え本心ではないように見えても、その行為をやめるようにしましょう。行為をあたえた人物以外から指摘を受けたときも同様です。それを見ている周囲の人間にとっても精神的・身体的被害となる場合があります。
 自分の行為がハラスメントではないかと指摘された時は、「誤解されている」「攻撃されている」と思う前に、自分の行為に「リスペクトがあったか」「配慮があったか」を見つめ直しましょう。誰が指摘したのかを詮索したり、直接交渉してコントロールしようとしたり、報復したりすることは禁じます。そういった行為が確認された場合は、新たな措置の対象となることがあります。
  自分が加害者であることを認めたからといって、人生が終わってしまう訳ではありません。被害者の尊厳を回復することは、自分の信頼回復にもつながることだと考えましょう。

 
9.確認書(協会関連事業を行う際には、全員サインしてもらうこと)
 日本劇作家協会の事業におけるハラスメント対応について
 
 日本劇作家協会は、舞台創造の現場におけるすべてのハラスメントが一掃されることを望みます。
 ハラスメントは心身に対する暴力であり、舞台創造の現場で保障されるべき、安全と平等、人としての尊厳と公平性を侵すものであり、どの立場であっても、起こしてはならないことだと考えます。
 そのため、日本劇作家協会の事業におきましては、当ガイドラインに基づいてハラスメントの防止に努めるとともに、ハラスメント行為の申告を受けた際には、その相談にすみやかに、かつ誠実に応じます。
 関係者の皆さまにおかれましては、当ガイドラインの内容をご理解いただき、協会のハラスメント対応にご協力ください。
 日本劇作家協会のハラスメント防止ガイドラインに賛同、ご協力いただける場合には、下記にサインをお願い申し上げます。
 
 
     年   月   日
 
  署名 


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