


坂手:私達は劇作家協会を作っていて、劇作家の権利を守ると同時に、表現じたいが守られなきゃいけないと、協会の中に言論表現委員会を作りました。今までマスコミにアピールを出したり、公開イベントを行ってきました。
ただ、今、時代が少しずつ変わってきたなと思うのは、赤松さんの作品がネット上でタダで見られるような状況があったり、発表の形態に変化があります。新聞で取り上げられるよりネットで話題になることの方がいいのではないかということで、今回、連続して、ネットで、TPPや憲法の問題を取り上げていくことにしました。
赤松:我々商業マンガ家の場合、すごい部数を刷られる分、過激な絵を描くと後で叩かれて、東京都から文句つけられたりっていうことがあるんで(註3)、劇はゆるそうだなって感じてたんですけど、劇作家というとシナリオは複製可能だし、マンガ家と同じ立場なんですね。
福井:ただ、戯曲に関しては上演が一番ですから、印刷されて流通するというのは大きな部分ではないですよね。
それから、ライヴはクローズドの場所で流れていくものですから、一般に問題になりづらい。例えば、パロディでアンパンマンとか、仮面ライダーなどのキャラクターが普通に登場するのは、演劇ですよね。許可を取っているかと言えば、取っていない。ライヴは、一番、ゆるくて、問題になりづらいということが事実としてある。コミケとちょっと近いものがあります。
ところが、その公演をテレビで放送するとなると、法的には同じでも、問題になりやすくなる。更に、DVD化するとなると、もう一段、難しくなります。何故なら、流れて消えずに残るからです。ネットに上げているものもそうです。
こういう演劇の特質と、最初から刷られて、キヨスクでも売られているようなマンガ表現とは、問題のなりやすさという点では大分違います。
赤松:坂手さんは、権利問題や、表現で、不都合に出会った経験は多いんですか?
坂手:それはあんまりないんですよ。
赤松:ないんですか、やっぱり自由ですね。例えば少年マガジンではですね、血統というか、血筋の話は結構NGなんです。「お前の親父は凄い格闘家だったから、その血筋で」という台詞は多分アウトです。でもジャンプならOKです。(『ドラゴンボール』の)悟空の息子の悟飯は強いんです。血筋のせいで(笑)。
谷:それはマガジンの自主規制のようなことなんですか?
赤松:誌風ですよね。差別表現というか、遺伝的な表現は避けてきますね。

福井:政治表現の自粛、自主規制の問題で、先ほどの血統の話がNGというのと本質的には似ていますよね。
坂手:日本の場合は自粛問題というのがとにかく大きいですね。1989年に天皇が死んだ時に、84〜5年から出回っていたテレビ番組の予定表というのがあって、死んでから1週間の番組はこうなるというのを各民放が持っているわけです。そういうものが出回ってきて、つまり、歌舞音曲禁止が行われるんだと理解して、80年代の仲間で「天皇が死んでも自粛しない」という組織を作ったりしていましたね。
赤松:フリーなんですね。
坂手:演劇、音楽、ダンス、美術含めて、天皇が死んで4日4晩、96時間、京大の西部講堂でイベントをやり通すというのをやりました。それで、新宿で大喪の礼が行われたので、同じ新宿区で、反自粛イベントを1日やろうというのを僕がリーダーでやりました。そんな昔もありました(笑)。
註3:「東京都青少年の健全な育成に関する条例」
<日本劇作家協会が出したアピール>(すべてPDFファイル)「東京都青少年の健全な育成に関する条例改定案に 反対するアピール」2010年6月4日
「東京都青少年の健全な育成に関する条例の再改定案に 反対するアピール」2010年12月6日
「東京都青少年の健全な育成に関する条例の改定可決に抗議するアピール」2010年12月17日
註4:『私達の戦争』愛知県の教育文化財団、共催取り消し「fringeが選ぶ2004年小劇場制作10大ニュース」
名古屋市文化振興事業団が燐光群『私たちの戦争』共催取り消し、大きな溝を残す 名古屋市文化振興事業団が燐光群『私たちの戦争』共催を決定後に取り消した。劇作家協会などの質問に対し、事業団は手続き論に終始した回答で逃げた。あまりにお粗末な顛末に、いちばん忸怩たる思いは当の事業団職員たちではないだろうか。藤沢市でも同様の事件が発生。「2003年演劇トピックス」
「燐光群公演『私たちの戦争』名古屋公演、共催問題で揺れる」
7月24日の朝日新聞の報道によると、8月19日に公演を予定していた、燐光群の新作『私たちの戦争』は、当初名古屋市文化振興事業団と共催の予定で、チラシ等にもその旨が記されていた。しかし『私たちの戦争』がイラク戦争をテーマにした反戦色の強い内容から、「イラク戦争は評価が定まっていない』ため、公平中立が原則の市の外郭団体にはふさわしくない、ということで、共催が取り消されたという(新聞報道に拠れば)。しかし、手続き場のミスがあったとして、共催負担金は予定通り支払う方向。なお同時上演の『だるまさんがころんだ』は共催する。
ちなみに、『私たちの戦争』は伊丹市の文化振興財団は共催の予定。
その後、日本劇作家協会(永井愛会長)、および日本劇作家協会東海支部・日本演出者協会東海ブロック・演劇人有志が連盟で質問状を、名古屋市文化振興事業団に提出した。
事業団は回答したものの、内容が不十分であり、劇作家協会から再度質問状が出された。
イラク戦争に関しては、イラク攻撃の理由とされた大量破壊兵器が見つからなかったことから、ブッシュ政権による情報操作が指摘され、2004年にはアメリカで「大量破壊兵器は存在しなかった」と断定する約500ページの報告書が公表されている。また、イギリスではブレア元首相への証人喚問も行われ、オランダの独立調査委員会は「イラク戦争は国際法違反だった」と結論づける報告書を公表している。日本でも2008年に航空自衛隊の後方支援に対して違憲判決が出ているが、日本の外務省は2012年に、A4用紙4ページの検証報告の概要版を公表したのみで、報告書全文は非公開とし、検証に値しないと批難されている。
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