土田 長田さんは4年前から講師もやっていますよね。
長田 はい。私はいつも後半のクラスを担当するので、書いたものをどうやって上演すればいいですかっていう質問が出ますね。この先に一歩進むためにはどうしたらいいんですかって。
土田 まさにいいモデルだもんね。戯曲セミナーからプロの劇作家になった人だから。
長田 私の講義では、旗揚げ公演でどうやって劇場の予約を取りに行って、大体どれくらいお金がかかったかも話しますよ。
長田 セミナーで最後に戯曲1本を提出すれば、先生の講評を受けられますよね。私は講評を伺って書き直して、それを“てがみ座”の旗揚げ公演にしたんです。
土田 すごい実践的だね。
長田 あと私は、劇作家を職業にするなら、賞に応募しているだけじゃ仕事にはならないって考えてて、はっきりそう言ってます。演劇ってひとりでやるんじゃなくて、いろんな人と関わりながらやっていくものだから、まわりの人と一緒に働ける準備ができていますって示さなきゃいけない。だから、上演活動をしないことには職業にはつけません、上演はプレゼンの場としてやってくださいって。上演を目指すためにも、チケット収入がこれくらいで劇場の手付け金はこれくらいでって話します。
土田 なるほど。実は劇作家って、なる気さえあればなれちゃうんだよね。食えるかどうかっていう大きなハードルはあるし、もちろん才能とかあるんだけれど、やるって決めることがすごく大事だとぼくは思うのね。
長田 私の場合はほんと、最初は座組もなんにもなくて。でも1年後にはなんとかなるだろうと思って劇場に契約に行ったんです。座組揃うのを待ってたら上演はさらに1年後になっちゃうから、待っていられないと思って。
土田 そうやって旗揚げして、9年で鶴屋南北戯曲賞。去年もすごい活躍だった、紀伊國屋演劇賞の個人そうだもんね。
長田 ありがとうございます。でも始まりは、セミナーで提出した戯曲です。先生の講評を聞いて何度も書き直して、“てがみ座”の旗揚げ公演にしたんです。
南出 あ、“らまのだ”の旗揚げ公演もそうです。『ずぶ濡れのハト』っていう。
土田 2015年の劇作家協会新人ん戯曲賞の、最終候補になった作品だね。
南出 公演のときは『青いプロペラ』に改題しました。昨年も上演したんです、2018年の「シアタートラム ネクスト・ジェネレーション」に選ばれて。
土田 ふたりともすごくいいステップアップだね。
南出 ぼくは同期のなかに、演出を任せられる人を見つけられたのも大きかった。東京で上演しようと思ったとき、貯金して名のある演出家に頼もうかなとも考えたんですけど、でもセミナーに通ううち、いま0合目にいて一緒に成長していける人と、遠慮も駆け引きもなしにやりたいなと思って。そしたらセミナーのリーディング発表で、とても上手な女の子がいたんです。ちょうどぼくが会社関係のイベントで二人芝居をやることになってた時期で、出演してくれませんかって誘ったんです。カラオケボックスで練習して、いろいろ話をして意気投合して。彼女なら演出も任せられるかなと思って一緒に劇団を立ち上げた。
土田 彼女も賞を取ったんだよね。
南出 ぼくが新人戯曲賞をいただいた年度に、彼女も若手演出家コンクール(2016)で優秀賞を。
長田 すごくいい出会い…!
南出 やっぱり同期だから、演出に不満だったら不満って言えるし。
土田 おんなじ地点から始めたからだね。
南出 そうなんですよ。お互い喧々諤々話せるからこそ、僕も彼女も幸運にも賞もらえたのかなと思ってます。