セクシュアル・ハラスメント事案の基本要綱 (公開にあたって要綱本文)
セクシュアル・ハラスメントの申告・情報提供はこちらから(チャートとフォーム)


セクシュアル・ハラスメント事案への対応に関する基本要綱
一般社団法人 日本劇作家協会 
2020年2月6日公開 
2020年9月18日改訂 
 
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基本要綱の公開にあたって
 この度、日本劇作家協会は、協会におけるハラスメントの予防・解決に向けた取り組みの第一歩として、「セクシュアル・ハラスメント事案への対応に関する基本要綱」を策定し、被害の申告への対応手順をまとめました。
 ハラスメントの被害は、とてもデリケートで複雑な問題をはらんでいます。この要綱を公開することで、被害の申告があった場合、弁護士等の専門家が素早く行動できるようになります。
 日本劇作家協会としての取り組みはまだ開始されたばかりで、経験の蓄積も乏しいなかでのスタートです。今後、よりわかりやすい運用ガイドラインの作成や、セクシュアル・ハラスメントにあたる可能性のある事柄の例示なども行っていくと同時に、基本要綱にある具体的な対応手順についても改善を重ね、必要に応じて改定を行っていこうと考えています。
 また、当協会ではセクシュアル・ハラスメントに限らず、モラル・ハラスメント、パワー・ハラスメント等についても、同様に取り組んでいきたいと思っています。しかしながら、これらはそれぞれの定義そのものから基本要綱を検討する必要があり、策定までに時間を要することが考えられます。本来であれば、同時に発表すべきところではありますが、セクシュアル・ハラスメントについては、すでにいくつかの事案が寄せられており、緊急性があると考え、先行して基本要綱を策定しました。
 取り組みはまだ始まったばかりですが、演劇の現場が、あらゆる演劇人にとって安全で、その立場や職種を超えて、公正で、平等であることを目指し、演劇界全体からセクシュアル・ハラスメントが一掃されるよう、今後とも努力を重ねてまいります。
一般社団法人 日本劇作家協会     
渡辺えり (基本要綱策定・公開時 会長)  



基本要綱説明会(2020年12月2日)
⇒Youtubeで視聴する
https://youtu.be/rd0FOJO6QwI

**タイムインデックスが有効なYoutubeでの視聴をおすすめいたします。
 
【登壇】
 ハラスメント勉強会委員:石原 燃 赤澤ムック 関根信一 高羽彩 土田英生(司会)
 ゲスト:サカイリユリカ 堀川 炎 横山拓也

《ご申告について》
*ハラスメントの申し立てにはフォームをご利用ください (ハラスメントに事務局長が関連している場合を除く)。

*もし事務局宛て・事務局員宛てのメールでハラスメントについてご連絡いただいた場合は、基本的にフォーム入力と同様に取り扱い、事務局内・臨床心理士・弁護士と内容を共有することがあります。 (2021年3月26日追記)


セクシュアル・ハラスメント事案への対応に関する基本要綱


第1)セクシュアル・ハラスメントに対する基本姿勢

  わたしたち日本劇作家協会は、舞台創造の現場におけるセクシュアル・ハラスメントが一掃されることを望みます。
 セクシュアル・ハラスメントは暴力であり、舞台創造の現場で保障されるべき、安全と平等、人としての尊厳と公平性を侵すものであり、どの立場であっても、起こしてはならないことだと考えます。
 そのため、ここに「セクシュアル・ハラスメント事案への対応に関する基本要綱」を示し、法令と規約に基づき、当協会が有する権限を最大限可能な範囲で行使することとします。同時に、当協会の権限が及ばない範囲を明確に示します。
 いずれの場合も、セクシュアル・ハラスメントに関する専門知識のない協会の役員や会員等が、法令と規約に基づかない調査や介入を行うことのないようにし、そのことによって、新たな被害、ならびに問題等が生じないようにします。


第2) セクシュアル・ハラスメントに関する個別事案への対応

 
対応のチャートも用意しています(申告フォーム、情報提供フォームあり)


1 被害者本人から、セクシュアル・ハラスメント被害に関する申し出があった場合

(1) 日本劇作家協会の業務に関連して被害が生じた場合
 日本劇作家協会の業務に関連して、協会の役員・会員・職員、または協会の委託を受けて業務を行う者等がセクシャル・ハラスメントを行い、被害を受けた旨の申し出が、被害者本人からなされた場合。

ア 基本的考え方
 日本劇作家協会は、協会の役員・会員・職員、または協会の委託を受けて業務を行う者等が、協会の業務に関連して、セクシュアル・ハラスメントを行うことについて、被害を防止するために必要な措置を講じる義務、及び、被害が発生した場合に必要な救済措置を講じる義務を負うと考えます。

イ 対応方針
 日本劇作家協会は、①セクシュアル・ハラスメントに該当する事実の有無を確認したうえで、②事実があると確認された場合には、当該業務の内容及び遂行方法等に関して、セクシャル・ハラスメントの発生を防止するために各関係者が配慮義務や注意義務等を尽くしていたのか否かを検証し、③その結果に応じて、必要な措置を講じ、さらに、④再発防止のために必要な措置を講じます。
 なお、上記①~④の対応は、できる限り被害者の意向に沿う形で進めることとします。

ウ 具体的手順
(A) 事務局長が申し出を受理
 日本劇作家協会の業務に関連して、協会の役員・会員・職員、または協会の委託を受けて業務を行う者等がセクシュアル・ハラスメントを行ったと、被害者本人から申し出があった場合、聞き取りを行い、申し出の内容を確認した上で、事務局長がそれを受理します。聞き取りは原則として臨床心理士など専門性を有する第三者に委託します。ただし、事務局長が当該事案に関与しており、事務局長に連絡するのが適切でないと判断される場合には、事務局長への連絡を省略し、直接、会長が受理します。
(B) 会長への連絡
 事務局長は、申し出内容を会長に連絡します。会長が当該事案に関与しており、会長に連絡するのが適切でないと判断される場合には、副会長に連絡することとします。
 なお、会長、副会長のなかに、当該事案と特に関係はないが、被害者より報告されたくない者がある旨の申し出があった場合には、その者を除く、会長、副会長、事務局長とで協議のうえ、連絡しないことができることとします。
(C) 調査担当者の選任
 前掲(B)の連絡を受けた会長は、調査担当者を選任します。調査担当者は原則として、セクシュアル・ハラスメントの事案の調査と対応に関する専門性を有する者とします。
(D) 調査担当者からの報告書の提出と配布
 調査担当者は、調査が終わったとき、または、理事会の判断を仰ぐ必要が生じたときに、会長または理事会宛の報告書を事務局長に提出することとします。
 事務局長は、報告書の内容を確認し、会長と理事に対し、調査担当者から報告書の提出を受けたことを連絡します。ただし、当該事案に関与している者、調査対象となっている者、または、当該事案と利害関係を有する者に対しては、会長、理事であっても連絡しないこととします。なお、被害者より、調査担当者を通して、理事のなかに、当該事案と特に関連性はないが、報告書を配付されたくない者がある旨の申し出があった場合には、調査担当者、会長、事務局長とも協議のうえ、当該理事に配布しないことができることとします。ただし、当該理事は、事務局長、または調査担当者から、被害者匿名のうえで説明を受け、意見陳述の機会も議決権も侵されません。
 事務局長は、報告書の配布に際し、調査結果報告書の記載内容について守秘義務を負い第三者にその内容を一切口外しないことを誓約する誓約書の提出を求めることとします。事務局長は、この誓約書の提出のあった会長と理事に対し、報告書を配布することとします。
 なお、事務局長が当該事案に関与しているか、調査対象となっているか、または、当該事案と利害関係を有する場合には、事務局長に代わって調査担当者が上記の報告書配布の手続を行うこととします。
(E) 対応方針の決定
 会長及び理事のうち、調査担当者からの報告書の配布を受けた者は、理事会として対応方針の原案を協議し決定することとします。なお、会長及び理事のうち、調査担当者からの報告書の配布を受けていない者がいる場合には、次のようにします。調査対象・処分対象ではないが報告書の配布を受けていない者がいる場合には、理事会としての決定がなされる前に、対応方針の原案について説明を受け、意見陳述の機会が付与されます。また、調査対象・処分対象となるために報告書の配布を受けていない者がいる場合には、理事会としての決定がなされる前に、対応方針の原案について説明を受け、弁明・意見陳述の機会が付与されます。
 対応方針を最終的に決定する前に、被害申出をした者との間で対応方針の原案について協議を行う必要がある場合には、調査担当者にこの協議を担当させることができます。
(F) 関係者の守秘義務
 前掲(A)から(F)までの各手続に関与した者は、理事会として公表することを決定した事実以外の事実について守秘義務を負い口外してはならないこととします。
 また、会員や役員等は、前掲(A)から(F)までの各手続による場合を除き、事務局長、会長、理事または他の会員や役員、及び調査担当者等、申告内容や調査状況を知りうる者に対し、被害申告のあった事案に関する問い合わせや照会をしてはならないこととします。


(2) 前記(1)以外の場合

 日本劇作家協会の役員・会員・職員、または協会の委託を受けて業務を行う者等がセクシュアル・ハラスメントを行い、被害を受けた旨の申し出が、被害者本人からなされたが、その行為が協会の業務に関連するものではない場合。

ア 基本的考え方
 協会の業務とは無関係な行為について、日本劇作家協会は、セクシュアル・ハラスメントによる被害の発生を予防するために必要な措置を講じる義務、及び、被害に対し必要な措置を講じる義務を負うものではありません。また、この場合において、協会は調査検討をする権限も有していません。
 なお、日本劇作家協会の役員がセクシュアル・ハラスメントを行った場合には、それが協会の業務に関連するか否かを問わず、役員の地位にあることの是非の問題が生じます。これは、協会の業務とは無関係な非違行為の場合と同様に扱われるべき性質のものです。

イ 対応方針
 申し出の趣旨が、演劇に関連するセクシュアル・ハラスメントに関する実情を把握し、協会内での防止策を検討するための参考資料として提出することであり、協会として当該事案に関する何らかの措置を講じることを求めるものではない場合は、匿名の情報として、これを受理し、記録として保管します。

ウ 具体的手順
  受理した匿名の情報は、会長及び理事会に報告のうえ、担当部署が管理します。
  匿名の情報は、勉強会などで利用する可能性があります。

エ 援助要請への対応
 日本劇作家協会として個別の相談に応じることはしませんが、相談先を知らないために、相談先を紹介するよう求められた場合には、次のとおり対応します。
(a) 無料電話相談
 日本労働弁護団が行っている無料電話相談ホットライン (全国)、及び、セクシュアル・ハラスメントに関する女性専用ホットライン (女性弁護士が対応)の電話番号は、次のサイトに掲載されていますので、各自でお調べくださるようご案内します。
http://roudou-bengodan.org/
(b) 専門弁護士による有料相談
  日本劇作家協会の会員が、自らの受けたセクシュアル・ハラスメント被害について、専門の弁護士に自ら相談料を支払って相談することを希望する場合、日本劇作家協会が行う会員向けサービスの一環として、日本劇作家協会の事務局長が日本労働弁護団の事務局に連絡をして、弁護士の紹介を受けるように手配いたします。なお、相談料については、紹介された弁護士と相談を受ける会員本人との間で直接協議して決めていただきます。

オ 附記事項
 申し出の趣旨・目的が、協会の業務に関連しないセクシュアル・ハラスメントを根拠に、役員としての適性の欠如を指摘し、協会の役職の解任等を求めるものである場合、協会の会員は、本人の責任においてセクシュアル・ハラスメントに該当する事実を証明し、規約に基づく権利を行使することができる旨を伝えることとします。


2 被害者本人以外から、セクシュアル・ハラスメントに関する情報提供があった場合

(1) 日本劇作家協会の業務に関連する行為である場合
 日本劇作家協会の業務に関連して、協会の役員・会員・職員、または協会の委託を受けて業務を行う者等が、セクシュアル・ハラスメントを行った旨の情報提供が、被害者本人以外の者からなされた場合。

ア 基本的考え方
 第三者から見て、セクシュアル・ハラスメントに該当すると思われる行為が存在しても、その対象とされた本人が同意・承諾<強いられた同意・承諾ではなく、本心からの同意・承諾>をしている場合には、法的にはセクシュアル・ハラスメントに該当しません。
 しかし、本人の同意・承諾の有無にかかわらず、協会の業務に従事する者は、第三者から見て、セクシュアル・ハラスメントに該当すると思われる行為はすべきではなく、日本劇作家協会は、役員・会員・職員、または協会の委託を受けて業務を行う者等に対し、こうした行為の無いよう、教育指導する義務を負い、また、その権限を有しており、その観点から、必要な措置を講じます。
 また、調査の過程で、被害者本人が同意・承諾していないことが判明した場合には、被害者本人の意向を尊重しながら、必要な措置を講ずることとします。

イ 対応方針
 日本劇作家協会は、被害者本人からの被害の申し出の有無にかかわらず、①客観的・外形的にみてセクシュアル・ハラスメントに該当する可能性のある行為の有無を調査し、②この事実が認められる場合には、被害者本人の同意の有無や認識とは無関係に、セクシュアル・ハラスメントがなされたとの疑念を抱かせる行為の再発を防止する目的で必要な調査を行い、かつ、必要な措置を講じることとします。
 また、この調査の過程で、被害者本人が被害の申し出を行った場合には、前掲1(1)アの場合に準じて必要な措置を講じることとします。

ウ 具体的手順
(A)事務局長が情報を受理
 日本劇作家協会の業務に関連して、協会の役員・会員・職員、または協会の委託を受けて業務を行う者等がセクシュアル・ハラスメントに該当する可能性のある行為を行ったと、第三者から申告があった場合、申告者への聞き取りを行い、申告の内容を確認したうえで、事務局長はそれを受理します。聞き取りは原則として臨床心理士など専門性を有する第三者に委託します。ただし、事務局長が当該事案に関与しており、事務局長に連絡するのが適切でないと判断される場合には、事務局長への連絡を省略し、直接、会長が受理します。
(B)会長への報告
 事務局長は、必要に応じて追加の聞き取りを行い、その内容を会長と副会長に報告します。聞き取りは原則として臨床心理士など専門性を有する第三者に委託します。ただし、会長または副会長が当該事案に関与しており、会長に連絡するのが適切でないと判断される場合には、複数の理事に報告することとします。
(C)注意喚起、対応措置
 報告を受けた会長または理事は、加害者に対し、第三者から見て、セクシュアル・ハラスメントに該当すると思われる行為を行わないよう注意喚起または必要に応じた適切な対応を行います。
 (D)専門家による調査が必要となる場合
 当該事案について、被害者本人が被害の申し出に至った場合には、その時点から、被害者本人から申し出があった場合の対応に移行することとします。
(E) 関係者の守秘義務
 前掲(A)から(D)までの各手続に関与した者は、守秘義務を負い、事実について口外してはならないこととします。
 また、会員や役員等は、前掲(A)から(D)までの各手続による場合を除き、事務局長、会長、副会長、理事または他の会員や役員、及び調査担当者等、申告内容や調査状況を知りうる者に対し、被害申告のあった事案に関する問い合わせや照会をしてはならないこととします。


(2) 前記(1)以外の場合
 日本劇作家協会の役員・会員・職員、または協会の委託を受けて業務を行う者等が、セクシュアル・ハラスメントを行った旨の情報提供が、被害者本人以外の者からなされたが、その行為が協会の業務に関連するものではない場合。

ア 基本的考え方
 セクシュアル・ハラスメントとして指摘された行為が協会の業務に関連するものではない場合は、日本劇作家協会には注意義務・配慮義務・指導教育義務等がないことになります。
 さらに、日本劇作家協会は、協会の業務に関連しない事案について調査したり検討する義務を負わず、その権限も有していないので、積極的な調査を行うことはできません。

イ 対応方針
 情報提供の趣旨が、演劇に関連するセクシュアル・ハラスメントに関する実情を把握し、協会内での防止策を検討するための参考資料として提出することであり、協会として当該事案に関する何らかの措置を講じることを求めるものではない場合は、匿名の情報として、これを受理し、記録として保管します。

ウ 具体的手順
 受理した匿名の情報は、会長及び理事会に報告のうえ、担当部署が管理します。
 匿名の情報は、勉強会などで利用する可能性があります。

エ 援助要請への対応
 サイト等で相談機関の情報提供を行い、個別の相談には乗ることは行いません。

オ 附記事項
 申し出の趣旨・目的が、協会の業務に関連しないセクシュアル・ハラスメントを根拠に、役員としての適性の欠如を指摘し、協会の役職の解任等を求めるものである場合、協会の会員は、本人の責任においてセクシュアル・ハラスメントに該当する事実を証明し、規約に基づく権利を行使することができる旨を伝えることとします。