九条やめると運が逃げますよ   
普通の国にならなくていいか

政治は商売じゃまずいでしょ

永井
  安倍さんってあんな辞め方をしたわけじゃないですか。あの突然の辞任会見ですよ。それがこういう復活って、作劇的に考えたらドラマチック過ぎません? まさかの復活であの時よりも危機が来るなんて、こんなのありですかねえ?
マキノ 不本意な辞め方してるから、やっぱりよけいに思ってたんじゃないんすかね。だから今度は絶対っていう決意を持って来てるんじゃないですか。安倍さん、そういうお家柄だしね。
沢田  僕ね、新幹線の中で、あの人、「総理、総理!」って小泉さんに言った女の人……。
マキノ 辻元……何だったっけ。
沢田  あの人に話しかけられて。で、その人がね、油断したんやろうけど「私たちみたいな商売してると」ってポロっと言ったんですよ。
永井  商売……。
沢田  ピースボートやってて、もう意気盛んで。(議員の)年数が長くない人がね、ポロっと「商売」って言いましたから。で、その時 『我が窮状』の歌詞を渡したんだけどね、うまいこといったら誰かにコピーして渡してくれるのかなって思ったら、何もないんですよね。だから一枚損したなあと(笑)。
 いや、それくらいにこう、あの人でさえね、おまえまだそれ言うたらあかんやろって感じの人でも「商売」言うんやから、安倍さんとか世襲の人は、もうお家の仕事ですよ。そういう感覚で政治家になる彼らは、もうロボットだと僕なんかは思う。小泉進次郎でしたっけ? 彼にしたって、まあ今はイケメンやからちやほやされてるかもしれないけど、中身は同じことでしょう。
マキノ ほとんど世襲の家業ですもんね。政治家っていうのは、いろんな人の利害を調整して周旋する人だから、ある蓄積された技術も必要だろうし、地盤とかも要るんでしょうし、そういう実務職の家業として成り立っててもいいと思うんだけど。ただ、あんまり戦争をやるっていう方向にね、「戦争ができる国家になることが普通の国家になることだ」っていうようなこと言い出されちゃうと、何かそれは違うだろうっていう。

まず前提から議論しようよ

Image沢田  世界のスタンダードっていう言葉、あれ嫌やな。
マキノ ですね。世界のスタンダードとか、「国際化せなあかん」とかよう聞きますけど、むしろそうならない方がいいんだって思いますね。日本は特殊な国の方がいいと思うし、事実、特殊な国なんだから。地政学上もそうだし。
沢田  鎖国しましょう!
永井  アハハハ。
マキノ いやマジで、どっちかっていうと、ちょっと鎖国に近い方がいいと思ってます。鎖国していた250年間っていうのは、内政的にも平和で安定していて、世界に誇るべき時代だった。
永井  文化がね、栄えた。
マキノ ね。250年よその国と戦争しなかったのって、それだけで誇っていいことだと思うんですよ。だからもう「ほっといてくれ」っていう(笑)。世界に対しては、「あんまり構わんとって」って限定的なお付き合いをするのがいいと思うんですけどね。
 日本って、たまたまですけど、大陸から独立しちゃってたわけじゃないですか。だからやっぱり独特な感受性とか文化があって、それはたぶんそんなに世界に通用するものじゃないんだろうと思う。向こうから観に来てもらう分にはいいと思うんですけど、こっちから積極的に出て行かなくてもいいんじゃないか。べたーっと同じ色になって、世界標準に日本が合わせていくのは違うような気がして。グローバルスタンダードとかグローバリゼーションとかさ、そんな話には絶対乗らない方がいいと思うのね。
 あと、自分が劇作家っていうことで言うと、ダンスとか音楽とかってやっぱ通じるじゃないですか、外国でも。だけど演劇って言葉だから、たとえ翻訳してもニュアンスまではなかなか伝わらない。特にこう、僕のようなチマチマした芝居を書いてると、とても通用しないなって思うからよけいに言うんだけど、通用しなくて結構と思うのね。べつにブロードウェイで自作がロングランしてくれなくても結構だと思うんだよ。
永井  外国にはパフォーマンス系ばっかり出てますよね。やっぱり言葉の問題がある。
マキノ そう。でも日本の中でやれば、一部だけど熱烈に面白いと思える人がいて、それだけでいいんだと思うのね。世界中の人に私の素晴らしい演劇を届けましょうとはあまり思わないですね。それは無理なので。僕は基本的にグローバル化とか、国際マーケットみたいなことにはほぼ興味がないんですよね。
 もちろん日本の優れたものが海外に出ていくのは良いことだと思うんですよ、アニメーションとかさ。宮崎駿が好きだって人が世界中にいるっていうのは、とても素敵なことだと思うんです。でもだからって無理やり、すべての分野で出て行こうとする必要は全くないと思う。
永井  原発の輸出も必要ない。国内的に考えても、核廃棄物は処理できないし、この30年以内に大地震が必ずくる。テロや報復攻撃の標的になるって考えると、九条をなくしたらいよいよ危ない。だけど逆に、軍備を整えて戦争をできるようにしとかないと危ないって言うじゃないですか。
マキノ 真っ当な議論がもっとちゃんと交わされてたらいいんだけど、ちょっとまやかされてるうちにそっちに持ってかれちゃうのは嫌なんだよね。知らない間に多数決でこういうふうになりましたとか、後で決定を知らされるみたいなのは。
永井  確かに議論がね、ないんですよ。
マキノ 「だって、皆さん自民党を支持したでしょ? 我々は国民に支持されてるんですから」って、あの投票率では本当は支持されたことにならないんじゃないのと思うし。で、憲法のように本来は幾重にも歯止めがあったものを少しづつなし崩しにしようとしてるんだったら、ちょっとそれは。
永井  今度はね、本当にやろうと思えばできちゃうわけじゃないですか。
沢田  ほとんど安倍晋三のワンマンショーでしょ。ワンマンショー過ぎて、自民党の中にだって賛成しない人はいるけど、もう「私がそうします!」みたいなことになっちゃってる。いえあなた一人に決めてもらったら困りますっていう。議論するったってどこか別の所でやってて交わる所でやらない。それについて何か言ったって、「まあいろいろ議論していただいた結果」みたいな。「してないっちゅうんや!」って言うても、「いや、していただきました、充分に」って。「それは足りない!」って言ったって、「いや、こちらとしては、それは充分に議論されましたので」と。
マキノ さっきのグローバリゼーションの話と同じで、これが世界の流れですからって言われると皆「へへ~」ってなるけど、「そもそも正しくないんじゃないの?」っていうことが、もっと話されてほしい。その前提が違うと僕は思ってるんだよね。「普通の国になるべきだというのは、もう皆さん一致してる考えでしょ、で、そのためには」っていうふうな運びをされちゃうと、「いやいや、普通の国にならない方が、むしろイカシてんじゃねえの?」って意見は封殺されちゃう。だから鎖国っていうのも、極端に言うとありなんじゃないのってくらいに思う。
沢田  東南アジアに行くと、ま、そういう人ばかりではないにしても、わりと日本人は東南アジアの人たちを下に見るじゃないですか。でもヨーロッパとかアメリカ行くと、東洋人は絶対に下に見られる。こういうことがある限りは、一緒にはならないから。(日本人は)下と思われてるんだから。アメリカの傘の下にいるわけだし。
 国として世界と肩を並べるということは無理なんだという、自分の器を知らないと。野球で松井がすごかったとか、上原がすごかったとか、ダルビッシュがすごいってなると、「いやもう素晴らしい!」って言うけど、それはほんの一握りの(個人の)ことだから。僕は「国際社会で何で日本が一番にならないといけないの? 競争しないといけないの?」って思う。
マキノ 日本って国家自体が、昔の言い方で言うと一等国になるとかね、そういう必要は全然ないように思うんです。あと、日本人は基本的に疎まれてるというか、あんまり好かれてないっていうのをもっと知るべきだよね。だって黄禍論[註3]の時もそうだったけど、第一次大戦終わった時のパリ講和会議で、人種差別撤廃を訴えたの日本だけでしょ。で、総スカンじゃないですか
 たまに、こう一握りの、野球選手とかノーベル賞とるような科学者とか、あるいは世界的な芸術家なんかが出てね。あと日本の工業技術はすごいねとか、町工場の技術はすごいねとか、世界に比肩し得るような優れたものがいくつかあって。もうそれだけでいいんじゃないかと思うんだよな。国全体の実力として、世界にのしていこうとか世界に貢献しようとかって思わない方がいい。常任理事国とか、もう絶対にならない方がいい。そんなに好かれてないし、この先も絶対そんなに好かれない。今はまあ、同盟国とはいうものの、アメリカの言うことをなんでもきく国ってのが実情なわけで。
永井  日本って海外から見れば絶対にアメリカの属国で、尊敬されてないのよね。経済大国になったから、何となく自分たちは一等国の気がしてるけど、文化的に民度が高いと思われてるわけじゃないから。
マキノ 経済もだんだん衰退してくるので、「できる範囲でがんばって行きましょう」くらいの方がねえ。そんなこと言うと、若い奴には夢がない話になっちゃって可哀想なのかなあ。
沢田  いやいや。そういうことを言う人もたくさんいないと。僕ら、そういう役割をしないといけないんじゃないかと思う。


註3黄渦論
19世紀半ばから20世紀前半にかけて、アメリカ合衆国・ドイツ・カナダ・オーストラリアなどの白人国家において唱えられた黄色人種脅威論。対象とされる民族は、主として中国人と日本人。


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