TPP・児童ポルノ法をどう見るか?   
新しいビジネスモデル

 「初音ミク」の二次使用によるビジネスモデルの可能性

 
くまがい:初音ミクの話もちょっとお聞きしたいんですが。

Image赤松:初音ミクは二種類ありまして、海外向けなのか(公式イラストは)CCマークを設定しているんですよね註22)。するとね、デッドコピー(完全な複写)OKになるんです。ある一定の基準のもとに。
 国内ではピアプロ・キャラクター・ライセンスっていって註23)、こんな風だったら二次創作OKだよと。だから日本ではCCはあまり広めてないんですよね。

福井:CC、クリエイティブコモンズライセンスは、この条件を守ってくれれば世の中みんなで使って下さいという意味のマークです。一回付ければ、世間全体への永久の意思表示ですから、撤回も出来ませんし、地域の限定も出来ませんね。ミクがどこかでそれをやったなら、日本人も含めてこれに依拠して、本当は構わないはずですが。

赤松:日本人はミクの何かをやる時に、これ使ってないですよね? 何かと制限されちゃうから。

福井:ミクのボーカロイドの動画っていう二次創作の大成功例があるけれども註24)、クリエイティブコモンズなどは必ずしも利用されてない。だから、オリジナル動画をどこまで二次創作に使って良いかはグレーです。グレーの中で、ありがとうございましたって言ってリンクしたり、そういう共存の仕組みですよね。


 絶版マンガを無料で公開するJコミ

福井:劇作家協会は過去の戯曲を社会に発信していくにはどうすればいいかという問題に取り組んでいますが、赤松さんのやられているJコミ註25)をちょっとご紹介いただけますか?

赤松:Jコミは『ラブひな』など、無料で読める。無料で読める代わりに、広告が出ると。この広告は広告代理店から出して貰っているんですけれど。それで(次のページを)めくると、もう一回だけ広告が出て、後はしばらく広告無しでず~っと(マンガを)読める。
 これで結構稼げるんですよ。広告料がワンクリックされると何円とか入ってきて、それが全て作者に行っちゃうというシステムですね。
 何でこれを始めたかっていうと、こういうことをやらないと絶版だからもう手に入らないんですよ。じゃあどこで手に入るかっていうと、ウィニーかブックオフです註26)。ウィニーとブックオフはそこで売られても(収益が作者に)全然入ってこないんですよ。それだったら、Jコミに収録して、広告収益を得た方が良い。しかもJコミでは、一番最後のページから、その作者の最新刊が買えるようになっていて、宣伝にもなるという形で、非常に今、好評なんですよね。無料で読めて(作者にも)お金が入ってくる。

福井:Jコミの収録作品の数がここに出ていますが、総巻数で既に1105巻。見られているビューワーの閲覧数の合計が1342万ビューを超えていて、それとは別にダウンロードが755万ダウンロードを超えている。両方合わせれば2000万超えです。

くまがい:ものすごく良心的なシステムですよね。作家にとっても、読者にとっても。出版社の権利を侵しているわけでもないし。

赤松:(逆に)宣伝になってますから。『ワンピース』クラスだと、ウィニーに流れているものを集英社が叩いてくれるんですよ。他のダウンロードサイトでも。でも絶版のものは叩いてくれないので、その辺はこうやって無料でオフィシャルにやって、作者も儲かるよっていう。ファンだってウィニーは違法でまずいし、しかもウィルスが入っているかもしれないし、ここで見た方が(マンガ家の)先生の収益にもなるし、気持ちいいじゃないですか。
 しかもツイッターで感想が言えるので、そこで「ここが面白かった」とか先生に言うと、先生も「昔の作品で感想言ってもらえるなんて、久々だから超うれしい」みたいな感じで、みんな嬉しい。

坂手:『ブラックジャックによろしく』みたいに、続編の方がまたちゃんと売れているから、結果的にこの数ヶ月で何千万円儲かったとか註27)。

赤松:あれは特殊な例ですけど(笑)。似たような感じです。

坂手:あれは読者も読んでいて後ろめたさがないわけですよね。


 戯曲は無料で公開し、上演料で儲けるビジネスモデル

坂手:演劇の場合は、お客さんがいるかどうか、上演されるかどうかが重要で、戯曲を読んでもらえば満足っていうことではないんです。赤松さんがネットで作品を公開されているのと同じように、僕らも、作品をフリーにして、上演をしたい人の目に触れた方がいいんじゃないかという意見もあるんです。今日の話で言うと、どこまで著作権を守るべきなのか、守ることによる弊害もいっぱいあるのではないかと。

赤松:あ~、そうか。ご自分が書かれたシナリオが各地で勝手に上演されてても、それは違法だけど、嬉しいんですね?

坂手:勝手に上演は困るんだけど(笑)、作品をフリーにすれば、目には触れますよね。申し込みはちゃんとして欲しいけれども、フリーにすることによって上演の機会が増えていくことに意味がある。

福井:ビジネスモデルの差ですよ。ライブ、特に演劇は、上演されることが主要な収入源だから、そこを無料でやられると痛いんですね。でも、戯曲の販売の部分で稼ごうとはあまり思っていないし、現に戯曲ってそんなに売れるものじゃないから、そっちはフリーで流しても、上演が促進されるんだったら、ビジネスモデルとしては十分成り立つかもしれない。
 マンガ表現は逆ですよね? マンガは、二次創作されてもいいじゃないかと赤松さんは話をされます。それはお人柄もあるけど、二次創作のところで稼ごうなんて思っていないからでもある。他方、印刷して売られる部分で稼いでいるから、そこを侵食される海賊版は流石に困るよ、っていうのがあると思うんですよね。
 ビジネスモデルによって、著作権の考え方って、当然、変わります。

坂手:僕らも何故、アーカイブスのことに取り組んでいるかというと、オーファン・ワークス(孤児化)の問題ですね註28)。作品がなくなっちゃう。出版されても、手に入らない。有名な作家の有名な作品なのに、どこの図書館に行ってもなかなかなくて、東京都の中央図書館にやっとあったりするとまだいいんだけど、国会図書館にもない場合もありますから、作品自体が散逸することを防がなきゃいけないという、一番引いた、最低守りたいところの取り組みを始めようと福井さんにも応援を頼んでいるんですが。
 14年前に福井さんとニューヨークでドラマチストプレイサービスに行きました註29)。僕ら最初、出版社って紹介されたんですけど、著作権を管理している組織でしたね。そこに小冊子になっている本がいっぱい並んでるわけですね。それで登場人物何人で、何場あって、しかもこの作品は作者がどの位の権利を主張しているかも判るようになっていて、こういうことを日本でできないかな、って言っているうちに14年経っちゃってるんです。

福井:一番最後のページがファックスの送信票になっていて、ワンステージ幾らと書いてあるから、いつどこで何ステージやりたいって書いて送れば、自動的に許可が降りて、それを払うと上演許可される。

赤松:それ、楽譜に近い。楽譜は自分が作曲したものを誰かに弾いて欲しいし、(楽曲使用の)対価貰えるんだったら、バンバン流して。

坂手:戯曲は楽譜に近いっていうの、いいな。

赤松:誰かに上演して欲しいんでしょ?

坂手:そうそう。

赤松:しかも、最初に刷ったら、もう絶版なんでしょ? 次は刷らないんでしょ?

坂手:なかなかね。

赤松:マンガは割とずっと、何度も再版するので。

福井:まぁ、そのマンガですら、絶版の多さは驚くほどですよね。非常に著名なマンガ家さんでも。

:『ラブひな』が絶版になってるって、僕、びっくりしたんですけど。

赤松:これだけは、Jコミの実験のために、(編集者に)「絶版にして下さい!」って言って、「え~!」ってすごい嫌な顔されて「海外のだけは勘弁して下さい。じゃぁ、絶版にしませんけど、絶版ってことにしましょう」ということになって註30)。私は出版社と仲良くする方なんで。

福井:赤松さん結構、かっこ良くて、Jコミも本当に私財を投じてやってますよね。100%(作者に売り上げを)バックだから、経費を全部自分で出している。

赤松:大した金額じゃないですよ。

くまがい:経費も全部、お出しになっているんですか!?

赤松:まぁ、でも、億万長者ですから(笑)。

坂手:言ってみてぇな(笑)。




註22初音ミク。公式イラストはCCマーク
初音ミク公式イラストがクリエイティブ・コモンズライセンス採用 世界のファンが利用容易に
 
註23
ピアプロ・キャラクター・ライセンス(要約)

註24:ミクのボーカロイドの動画っていう二次創作の大成功例
バーチャル・シンガー『初音ミク』は、声優「藤田 咲」さんが演じるキャラクター・ボイスを元に作り上げられた、ボーカル・アンドロイド=VOCALOID(ボーカロイド)。
初音ミクは当初の販売目標は2007年内に1000本だったが、発売後約一年間で4万本以上を出荷することになる。2007年8月31日に初音ミクが発売されると初音ミクを用いた動画が動画投稿サイトに次々と投稿された。それらの中でも特に9月4日にニコニコ動画に投稿されたロイツマ・ガールのパロディ動画『初音ミクに「Ievan Polkka」を歌わせてみた』は大きな支持を集め、初音ミク人気の発火点となった。
動画を見た視聴者が初音ミクを購入、新たな動画を投稿するという好循環により初音ミクの人気は膨らんでいき、徐々にユーザーが作詞作曲を行ったオリジナル曲の割合が増えてゆく。ニコニコ動画で初音ミクを使用した楽曲を発表している作家はアマチュアだけでなくプロの作家が楽曲を発表している場合もあり、人気となった音楽家が、初音ミクを使用した楽曲でメジャーデビューを果たすケースも見られるようになっている。
ニコニコ動画上では初音ミク発売以前より別のユーザーが投稿した動画を利用して新たな動画を作るといったことが盛んに行われており、初音ミクを用いた動画からもそうした動画が数多く生み出され、初音ミクで作成された楽曲にPVを付ける、あるいはその楽曲を歌う、演奏するといったように様々な広がりを見せている。

註25
Jコミ

註26:ウィニーかブックオフ
ウィニー(Winny)
ファイル共有ソフト。東大情報基盤センター特任講師の金子勇氏が映像や音楽を共有するソフトを開発して無料で公開し、ユーザーの支持を集めた。
違法コピーを可能にしたとして、2004年に著作権法違反幇助罪に問われ、一審・京都地裁で有罪判決を受けたが、二審の大阪高裁では逆転無罪の判決。2011年に最高裁が検察側の上告を棄却し、無罪が確定した。

ブックオフ(BOOK OFF)
中古本販売チェーン。一般書籍の他、マンガ・CD・DVD・ゲームの買取と販売を行い、直営店と加盟店を合わせて、全国に1,059店舗ある。

註27:『ブラックジャックによろしく』
漫画『ブラックジャックによろしく』が電子書籍で全巻無料配信」2012年10月04日
『ブラックジャックによろしく』は、医療現場の現状を研修医の目線で描いた佐藤秀峰さんの漫画。佐藤秀峰さんは、2006年に最終巻が発売されて以降、書店で売り切れているにも関わらず重版しない出版社に疑問を感じて、今年4月に講談社との契約を解除したそうだ。自ら立ち上げたサイト漫画 on Webでは電子書籍として配信済みだったが、先月9月15日、二次利用を完全に自由化した事で各電子書籍サイトでの無料配信が始まった。

『ブラックジャックによろしく』を二次利用フリーにしたらすごいことになった
・2012年9月15日より二次利用フリーに
・『無料で「ブラックジャックによろしく」が全巻が読めるiPhoneアプリ』がApp Store総合無料アプリランキングで総合1位獲得!
・他サイトやアプリでの閲覧者を合わせると、新規読者は100万人以上
・続編や他作品の売り上げが好調
・二次利用フリー化に合わせて開催した原画展が100万円以上の売り上げ

『ブラよろ』二次利用フリーにしたらすごいことになったよ報告。
二次利用に関しましては、フリーということで僕には直接著作権収入はありません。
では、何も収入がなかったかと言うと、漫画 on Webの閲覧者数が大幅(3〜5倍くらい)に伸び、僕個人でいうと『新ブラックジャックによろしく』を始め、他の著作の売り上げが非常に良いペースで伸びています。
数字だけで見れば紙媒体のコミックス版に匹敵するか、それを超えそうな勢いです。
10年前の作品がたったの1ヶ月で。
ブラックジャックによろしく - 漫画 on Web

註28:「オーファン・ワークス(孤児化)」
そろそろ本気で「孤児作品」問題を考えよう
・世の中の著作物の半数以上が「孤児」状態
・権利者が見つからなければネット公開は夢のまた夢
・NHKアーカイブズでさえ6年間で公開できたのは1%強の番組だけ
・Google対抗軸としてEUは欧州オーファン指令を採択
・アーカイブ化の苦闘が続くオーファン対策「先進国」日本
・日本で孤児作品を増やさないためにできること

註29:ドラマチストプレイサービス
Dramatists Play Service, Inc.
1936年に、上演機会を促進し、戯曲の実演版 (Acting Edition) を公開し、アマチュアとプロのリース権(期間契約で貸出し)を処理することで劇作家をサポートするために創設された。

註30:『ラブひな』絶版
作家から見た「絶版」
赤松=厳密に言うと、出版社が絶版にすることはほとんどない。なぜなら、絶版にしても得することはないから。単純に刷られなくなっているだけなんです。
桜坂=「品切重版未定」というやつですね。
赤松=僕の場合は『ラブひな』(講談社、1999)がそれに当たりました。絶版であるかどうかというのは、作者さんであってもわかりにくいところなんですよね。だから確認しなくちゃならないんですが、担当に「刷るのですか?」と確認したら、すぐには刷る予定はないと言う。では、絶版ということにしてくださいと依頼したので、現在は、『ラブひな』は絶版扱いになっています。僕の場合は講談社も「ご自由にどうぞ」という姿勢を見せてくれました。



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