TPP・児童ポルノ法をどう見るか?   
児童ポルノ禁止法案の問題
 
「被害児童のいない」フィクションへの規制

Image坂手:セクシャリティの問題がかなり変わってきていて、児童ポルノ法案のこともそうなんですけど、例えば、男性の裸も駄目だと、児童ポルノ的にはなってきていて註16)、ある意味、男女平等ですが、広範に駄目なものがあって、第三者が非親告罪でやっていくと、これはもう破綻しているような気はするんですよね。

赤松:それでマンガ文化が発展していくかというと、発展には役に立たないです。

福井:児童ポルノ禁止法改定案の中に、フィクショナルな表現、マンガとかアニメ表現も規制の必要性を検討しようという附則二条が入っている点のお話だと思うんですけれども、あれは、元々が非親告罪ですから、第三者が判断をすることに当然なるわけです。
 フィクショナルなマンガやアニメの表現ですから、児童虐待の被害者がいないことが特徴です。よって規制するなら当然、(被害者からの訴えではなく)第三者が判断するしかない。そうすると、著作権の非親告罪化で、第三者が判断するのと似た問題が存在するのですね。

赤松:問題は、性表現を規制しようとしている人達というのは「そういうもののない世界はきっと、きれいだろうな」って思っていて、規制したいんですよね。
「そういう規制をするとマンガの裾野がどんどん狭まって、マンガ産業自体が弱くなりますよ、いいんですか?」って聞くと、「いい」って言うんですよ。「子供を守るためなら、文化なんか無くなってもいい」という極論まで言われると、もう話し合いは無理なんです。

福井:フィクショナルな表現を児童ポルノの一種として認定し、規制しようということに対しては、お二方はどんなふうに感じるんですか?

:僕はもうストレートに反対しますけれども、ただ、児童ポルノ法になってくると、演劇の現場に直接関係してくることはないと思うんですが。非親告罪、TPP、児童ポルノ法案、全部含めて、表現者の側が萎縮したり、警戒したり、判断に迷ったりというところが気になっています。我々も勉強しなきゃいけないし、何をやっていい、何をやっちゃいけないということは、自分の良心に照らして考えたり、著作者や描写される側の、気持ちに立つというと安っぽいですけど、それはしなきゃなとは思うんです。
 でも、一律に法律で決めたから駄目と、グレーゾーンをなくすというのは、萎縮にしかならないと思うし、児童ポルノ法案で、誰も被害に合っていないイラストっていうもので、罰則するのはおかしいと思うし、本当に子供が好きでたまらない、どうしたらいいんだ、というような人の(精神的な)逃げ場も全然無くなってしまうと思うんです。

赤松:私がちょっと訴えておきたいのは、これは噂なんですが、児童ポルノで性表現が規制できたとして、次は、自殺とか殺人の表現も規制しようとするのではないかと註17)。
 彼らはきれいなものが好きだから、そういうものがない世界を作りたいんですよ、創作物の中に。まあ、そういう毒気の無い作品だけだったら、安心して輸出もできるし、自分達も見て楽しいし、子供にも見せられるから。なるべくそういものは抜いちゃって、殺人もなくして、『名探偵コナン』もやめちゃって、パンチラもない、(ドラえもんの)しずかちゃんも入浴しない、そういうのが望ましいと。
 児童ポルノ法で考えが止まると関係がないと思う人が多いかもしれないけど、次に殺人駄目よ、自殺駄目よ、と色んなものを規制されていくワンステップ目かもしれないというのが注目点なんですよね。



註16児童ポルノ法案。男性の裸も駄目
「三号児童ポルノ」(児童ポルノ法二条三項三号にいう児童ポルノ)
写真、ビデオテープその他の物であって、
(1) 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって
(2) 性欲を興奮させ又は刺激するものを
(3) 視覚により認識することができる方法により描写したものに該当するものである

あまりに幅広いものが該当し、何に刺激を受けるかも個人により千差万別なため、衣服を完全に着用していない児童の写真や映像のほとんど全てが当てはまり、ジャニーズのステージも取り締まり対象になり得る危険がある。

2009年6月26日の衆議院法務委員会・民主党の枝野幸男氏の指摘
「例えば十六歳、十七歳の、わかりやすく言うとジャニーズなどの若い男の子が上半身裸でいる映像とかそういったステージとか、そういったものはたくさんあります。これは明らかに同世代の女の子たちの性欲を興奮させ、または刺激をしているというふうに思います。なおかつ、着衣の一部、つまり、上半身裸になって、あるいはステージの途中で着ていたものを上半身脱いだりするということがありますが、明らかにこれは条文上は入ってしまう。」
「もちろん、それは社会通念上、そんなものは取り締まらないという現実になっているんでしょうけれども、こういったものが条文上入っていってしまうということは、もしかすると取り締まりの対象にされるかもしれない、そういう危険性があるという状況はやはり避けるべきである。」


註17自殺とか殺人の表現も規制
「青少年有害社会環境対策基本法案」
自民党議員を中心に、1999年より起案が進められ2000年に「青少年社会環境対策基本法」の名義で第一次草案が公表された。その後「有害」の二文字が追加され、2002年の第154通常国会への法案提出が予定されていたが個人情報保護法・人権擁護法と並ぶ「メディア規制三法」との激しい批判で、提出断念に追い込まれた。
その後、2004年の第159通常国会では業界ごとの青少年有害社会環境対策センター設置や自主規制基準制定に関する部分などを除去した(「除去された箇所は、後で改めて立法する」とされる)「青少年健全育成基本法案」が参議院へ提出されたが、付託委員会すら決定されない(参議院には衆議院と異なり青少年問題に関する特別委員会は設置されていない)まま審議未了・廃案となった(但し、同法案を議員立法で再提出し、成立を目指す自民党の方針は現在も変わらない)。
「青少年の性若しくは暴力に関する価値観の形成に悪影響を及ぼし、又は性的な逸脱行為、暴力的な逸脱行為若しくは残虐な行為を誘発し、若しくは助長する等青少年の健全な育成を阻害するおそれのある社会環境」との規定から、性表現だけでなく、「自殺、殺人、暴力」表現が、国によって規制される危険性がある。

表現の自由に関する緊急アピール」日本劇作家協会など 2003年1月22日
[該当部分]
「青少年有害社会環境対策基本法案」では、性と暴力に関する表現について、何が有害かを国が基本方針として規定し、事業者ごとに協会を作らせて、表現行為に直接介入できる規定になっています。性にしても暴力にしても、時代や地域、宗教、風習の違い及び、表現行為の目的や性格によって、その表現の許容範囲は、千差万別です。この法案にしても、 「人権擁護法案」にしても、民事・刑事の問題として、現行でも、被害がおきた場合の対処はなされています。国があらかじめ規定を設けて取り締まる必要はないはずです。



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