TPP・児童ポルノ法をどう見るか?   
グレーゾーンを守る方法

Image青井:「好きに改変していいですよ」ということを、著作権者から言われることが、ごくたまにですがあるんですよね。そういう場合、一札、(契約書を)取っておいた方がいいですか? 今みたいにネットなどで、横合いから言われる可能性が増えている時代では。

福井:取った方が安全には違いないんだけど、一札取ろうとすると話が変わるということはよくあることで、それが、黙認とか、暗黙の領域の強さでもあり、脆さでもあるんですよね。明確にしようとすると逃げて行く、逃げ水なんです。

青井:関わってくる人も増えますよね。

福井:そうそう。例えば、作家から一札貰おうと思えば、多くの場合出版社が窓口になると思います。そうなると社内手続もあって難しくなってくる。また、好きにしていいって言うけど、本当にどうなってもいいの? となると、そうじゃない。では、文書にするなら「原作を尊重してくれる限りOKです」と書くか、となってきて、それは貰った方にとっては何の安心材料にもならない。原作を尊重していないと言われれば、それまでですから。グレー領域を言葉にしようとすると、どんどん逃げていくんですよ。

「黙認マーク」の提唱

Image福井:赤松さんは、コミケで、そのグレー領域を守っていくために、「黙認マーク」というのを提唱したんですよね?

赤松:これはデッドコピーじゃなければ、二次創作やってもいいよ、というマークです註6)。これがマンガのどこかについていると、二次創作をやってもいい。但し、これはコミケの当日だけです。その後、他の場所、コミケの同人誌書店があるんですが、そこでは駄目だけど、コミケ当日だけなら問題視しませんと。これは、フィギアのワンダーフェスティバルでも当日版権というのがあるんですけども。それと似た感じで、当日だけ我々は見て見ぬふりをするからというものです。

福井:黙認の「見える化」ですよ。

赤松:そう。これって、意味が分からないんですよ(笑)。黙認してないだろ!って(笑)。
 このマークを出版社が付けていいかっていうと、私は付けていいって言われてるんですけど、ジャンプで付けられるかっていうと付けられないと思うんです。でも原稿のどこかに紛れ込ましておくと、警察は、それを見て(著作権者が黙認しているなら、逮捕は)やめとこ!ってことになる(笑)。

福井:赤松さんの原稿のどこかに紛れ込ましておくというのは、どこかのコマの端っこに、ちょっと書いてあるとか、そういうことでしょ?(笑)

赤松:あとは、キャラクターのTシャツのマークとか(笑)。それで、警察の萎縮を狙うというマークなんですね。

福井:日本で初めてですよね。警察を萎縮させようとしたのは(笑)。

赤松:私のマンガにこれが付いていることによって、同じマガジンに載っている『はじめの一歩』が著作権侵害にあっても、横の繋がりで、同じ雑誌のものも警察は勝手に訴えにくくなる。波及効果がある。

:以前、ネットでTPP関係のことで「これは非親告罪になろうがなるまいが、赤松健の問題ではなくて、同人誌をやりたい皆さんの問題なんです」と書かれてたことがあったと思うんですけど註7)。

赤松:これは考え方が二つあって。もしTPPが入らなければ、黙認マークでさえ無い方がいいっていうのが、私の本音なんですけど。但し黙認マークがあるとTPPが入らなくても色々なメリットがあるので、今のところ判断がつかないです。どっちがいいのか。
 女性の同人作家なんかは「私たちのことは放っておいてよ」ってみんな言いますから。自分達の描いたものが無断でネットにアップロードされても訴えるつもりは無いし、私達は内輪で楽しく描いているんだから、他の人はどうでもいいんだと。それで著作権侵害で捕まるのは困るけど、そこだけ何とかしてくれれば、もう私たちは世界のどこかで勝手にやっているから、と。売り上げも関係ない。楽しみのためにやっているということなんで。
 『スラムダンク』の仙道と流川が愛し合うという同人誌があったとしましょう。そしてカップリングは、仙×流(せんる)は良くて、流×仙(るーせん)はダメだというような拘りを持っていて、友達と「そうよね! そうだよね!」って言いながら描いてる、そういう楽しい人達なのであって、もう儲けとかじゃないんですよ、そういうのは。作者だってもういいですよ、そういう人達はまぁ。

坂手:勝手にやってろ、と(笑)。

赤松:1日に何千万円も儲けられたら、作者としてもちょっとどうかと思いますけど、ファンが自分の同人誌をやってくれる分には、そっとしといてあげたいですよ。これを警察が勝手に、作者の知らないところで起訴しちゃったら、逆にちょっと怒りますよ。

坂手:だから、第三者が判断するっていうことに対して、すごく違和感を感じる。

赤松:感じます。

坂手:痛いよ、っていう人が、痛いからやめてとか。僕が気分悪いからやめてじゃなくて、それはいけないことだという根拠がどこにあるかが、かなり判りにくい。

赤松:そうです。

福井:著作権は誰のためにあるのか、何のためにあるのかって、かなり根本の問題に関わるんですよね。国家の秩序のためにあるのか、それとも、個人が自分のインセンティブを守るためにあるのか。



註6「黙認マーク」
「警察の萎縮効果狙う」赤松健さん、2次創作同人守るための「黙認」ライセンス提案
新マーク「CV」(connivance、黙認)
TPP対策として昨年から提案していた、同人誌即売会当日に限らない恒久的なマーク「段階的マーク案」も、ブラッシュアップして再提案。以下の3つのレベルに分けて提案する。
【レベル1】デッドコピーや原作からの切り貼りでなければ、アニメ化や実写ドラマ化、ゲーム化など、勝手にマルチメディア展開をしてもOK。ただし、作者へのメールによる報告義務があり、作者が次回作を制止できる。
【レベル2】デッドコピーや原作からの切り貼りでなければ、2次創作同人誌はエロでも何でもすべてOK。同人誌書店やダウンロード販売もOK。ただし紙やデータを使った静止画のみ。
【レベル3】デッドコピーや原作からの切り貼りでなければ、2次創作同人誌を勝手に作ってもうけてOK。ただし直接的なエロや暴力など、原作の掲載誌の基準を超えるような表現は認められない。その判断は、同人作家か即売イベント運営側が負う。

追記(2013.10.24):その後、赤松氏は「黙認マーク」より明確な「同人マーク」を、週刊少年マガジンの新作「UQ HOLDER!」(ユーキューホルダー!)で、8月末から使用。「同人マーク」は、作者が自分の作品について、ファンが2次創作同人誌を作成して同人誌即売会で配布することを認める意思表示をするためのマーク。
commonsphere「同人マーク・ライセンス 1.0」
「同人マーク」運用始まる 赤松健さんの新連載から ライセンス1.0とFAQも正式公開

註7
★ホントは怖いTPP ・・・「非・親告罪化」で日本の漫画界はどうなる?


Index TPPで非親告罪になると、何が起こるか
   性表現はなぜ規制されるのか?

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