TPP・児童ポルノ法をどう見るか?   
TPPで非親告罪となると、何が起こるか?

警察がチクリで逮捕する?

:僕は劇作家協会の若手の1人で、TPPの話を言論表現委員会で聞くまで、ほとんど何も知らなかったですし、以前、赤松さんのtogetterでまとめられてたものは読んでいたんですが、演劇と関係があるのかというのも、正直、ピンときていなかったのが、1日でガラッと認識が崩れて。Image
 例えば、演劇をやっていて恨まれることも多々ある、僕なんかは恨みを買いやすい人間なんですが。パロディかオマージュか線引きが曖昧な中で、既成のキャラクターや、既成の台詞の改変やパロディを出した時、非親告罪で、チクリのような形でガチーンと規制がかかることが考えられる。

赤松:チクリ自体は、今でも可能ですよね?

福井:はい。ただ、今は権利者が告訴しないと捜査どまりですけど。

赤松:谷さんを恨んでいる人がいるとして、菓子折りを持って作者のところに行って「あの人は悪いですよ」って言って、更に110番して「あの人は悪い」って言えば、今でも可能ですよね(笑)?

福井:どれだけ谷さんを恨んでるんですか、何で菓子折りまで(笑)。

赤松:私はエレクトーンを幼稚園の頃から習っていて、そこで『ウルトラマン』とか弾いて、発表会もありましたが、あれは(楽曲の著作権料を)払ってなかったですよ。しかも会場費を払うために入場料300円とかいう場合もありましたよ。

福井:著作権法には38条1項というのがあって「非営利の入場無料の上演・演奏は、許可なし・支払いなしに行って構わない」とあります。でも、入場料をとれば、まず駄目ですね。

赤松:犯罪者、子供達、逮捕(笑)。いたいけな子供達がウルトラマンを弾いていたら警察が入って来て逮捕!(笑)

福井:著作権侵害ですよ。ところが、現状は親告罪だから、告訴がないと逮捕も難しいし、刑事処罰はありえません。
 この場合、JASRACが子供達を告訴するかというと、しないですよ。教育しようとはするかもしれませんが。

坂手:高校演劇のコンクールで、既成の作品を上演する場合、上演料をちゃんと払っていないと、コンクールに勝ち昇れないという仕組みになっていて、一律5000円ということになっています。ただ、日本政府は、これはタダでやってもいいという判断で、高校演劇の方達の自主的な規定です。

福井:高校演劇の場合、上演が1時間なので、必ず既成の作品はカット・改変されます。いくら非営利でも、改変はやってはいけないことになっています。改変している以上、何かの許可がないとできないね、という話になって、支払いをする根拠に一応なっている。

パロディも盗作と一緒?

:改変は法律的にNGと明記されてるんですか?

福井:はい。人格権侵害ですから、同意がないと無理ですね。

:オマージュ、パロディも今のところ罰則になると聞いたんですが。

福井:オマージュ、パロディって何かというと、多くは「原作に対する翻案」と言って、著作権者の許可がないと駄目で、同時に「原作の改変」でもあって、著作者人格権という権利にも関わるんですよ。日本でパロディが著作権の裁判になったのは知る限り2回ですが、この両方で、負けてます。註5)これを許すという規定は今のところないから、舞台のパロディものも、コミケのパロディものも違法の判断を受ける可能性は相当ある。

:例えば、登場人物で、いかにも『明日のジョー』っぽい奴がいたり、『明日のジョー』の台詞を言うシーンがあったとすると、これは、オマージュに入るんですか?

赤松:前提として、ちば先生は、いちいち(文句を)言わないです(笑)。

福井:日本の裁判所は、オマージュやパロディでも、ただの盗作でも、これまでほぼ基準は一緒で、駄目なものは駄目っていう考え方なんですよ。

:じゃあ「真っ白に燃え尽きちまったぜ」と言った瞬間に、立件されたらアウトなんですか?

福井:これがそう簡単じゃなくて、元の「著作物」が使われていなければOKなんです。例えば、舞台の中で「タケコプター」という一言が登場したとしますよね。この短いフレーズに著作権が及ぶということはちょっと考えにくい。

赤松:タケコプターくらい有名だと商標登録されてるかもしれないですよ。

福井:仮に商標登録されていても、作品の中で言葉が登場する程度のことに権利は及ばないので、それを商標権に基づいて止めるのは、多分、無理ですね。ただ作品タイトルにして、その作品を展開した時などはケースによって法律違反になり得るから、たとえば『ドラえもん』というタイトルの舞台を(無断で)作るのはちょっと危ない。

坂手:でもチラシのキャッチコピーに「タケコプターも出るぞ!」っていうのはまずいんですね。

福井:まあ商標的な使い方には、近づきますけどね。

赤松:でも「藤子先生、ごめんなさい」と書いておけば、藤子先生は訴えないですよね(笑)。

福井:「なんとか先生、ごめんなさい」というのは、マンガの世界特有のルールですよね(笑)。

赤松:親告罪だから、先生の気が済めばいいんですよ。

福井:さっきの話に戻しますと、「真っ白に燃え尽きたぜ」位では著作物の利用ではないでしょう。ところが、ジョーが出て来て、力石が出て来て、殴り合ってとなってくると、少し話しが変わってくるわけです。

赤松:ありますけどね。

:ありますよ。

坂手:あるあるある。

青井:音楽でも何小節以内だったらお目こぼしというのがありますよね。

福井:やや伝説の類で、4小節とか言いますが、JASRACの公式見解は、長さがどうであろうが著作物が使われれば全部駄目です。「何小節から著作物ですか?」と聞かれれば、ケースバイケースです。2小節でも、もの凄く独創的なフレーズと、長い音がず~っと続いている場合では違ってきます。よってお答えは「著作物と言えるほどの長さのものが使われてる」かどうか次第なんです。それほどのものが借りられていれば、パロディと呼ぼうが、オマージュと呼ぼうが、「藤子先生ごめんなさい」と書いてあろうが、裁判所の目から見れば一緒です。
 「藤子先生ごめんなさい」と書いてあれば、使用を自認したことになるので、より不利になることはあり得ますけどね(笑)。偶然の一致とか、無過失とか言えない(笑)。

坂手:そんなことありましたか? とか言えなくなる(笑)。

福井:私が思いついたんですよ「タケコプター」は、みたいなことが言いづらくなる(笑)。
 ただ、赤松さんの言う通りなんですよ。現行法では訴えられなければ、民事の責任もないし、親告罪だから刑事の責任もない。ということは、著作権者の気が済めばそれまでのことだというのは確かにある。そうすると、どうやったら怒られないで済むか、或いは、この人が一番嫌なことは何なのかみたいな「阿吽の呼吸」がすごく大事になるでしょう? 日本人はこの阿吽の呼吸に長けていて、その使い方がうまい人が成功しやすい。その阿吽の呼吸や業界特有のシステムを非親告罪化は、ひょっとすると揺るがすかもしれない。



註5パロディ裁判
1.「パロディ・モンタージュ事件」
1970年1月、マッド・アマノが自身のフォトモンタージュをまとめた作品集『SOS』を出版。その一部が『週刊現代』1967年6月4日号に「マッド・アマノの奇妙な世界」として発表された。その中の1枚が白川義員撮影のアルプスを滑降するスキーヤーの写真をもとにしたものであるとして、1971年、白川義員が著作権・著作者人格権侵害でマッド・アマノ氏を提訴。裁判は二度の最高裁判決をはさんで足かけ16年に及び、1980年の最高裁判決はアマノ氏の作品は著作権法上許される「引用」にはあたらないとして、アマノ氏敗訴の判決を下した。

2. 「チーズはどこに消えた?事件」
全米ベストセラー第一位の『チーズはどこに消えた?』に対して、全体構成やストーリーはかなり細かいところまでそっくりの『バターはどこに溶けた?』という本を日本の出版社が出版。世界観は原作と正反対の、いわば批判的パロディであったが、東京地裁は2001年、「パロディだからといって、オリジナル作品の著作権を侵害することは許されない」として出版差止の仮処分を発令した。

パロディは文化?それとも違法?
パロディ商品「面白い恋人」をめぐる商標権侵害などの裁判で、吉本は「パロディは大切な笑いの文化」と主張。一方、石屋製菓は「面白くもなんともない」と全面的に対立する。商標権や著作権などの侵害の恐れがあるパロディは、“本家”の寛容な精神や、社会の理解のもとで成り立つグレーな領域で、日本では明確な基準はない。しかし海外ではパロディの規準を決めている国もある。こうした中、文化庁も、パロディに関する法律を定める検討を開始した。


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2017年度のプログラム(全11企画)

11月2日(木)〜21日(日)
カムカムミニキーナ
『>(ダイナリィ)
〜大稲荷・狐色になるまで入魂〜』<

11月17日(金)〜26日(日)
燐光群
『くじらと見る夢』(仮)

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