TPP・児童ポルノ法をどう見るか?   
文化を育てるのは誰か?

 編集者の新人育成能力
 
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:これは絶版マンガを扱ってるわけじゃないですか、ここに例えば、新作だったり、書き下ろしが登場する可能性はあるんですか?

赤松:それはやらないですよ。出版社が嫌がるから。私は出版社の新人発掘能力、新人育成能力をすごく評価しているんですよ。自分がそうだったから。
大学の慢研や同人誌なんかで好きに描いているだけだと、やはり限界もある。自分では面白いと思って描いているから、読者のことは特に意識していないんですよ。そこを編集者はね「こうしたらもっと面白くなる」って助言して、人気アンケートも上がっていって、二人で喜んで、そしてドンドン売っていく、育てるということを出版社がやる。これがないとあんまり上手くならないんですよ。

坂手:おっしゃる通りですね。演劇雑誌というものがなくなっていきつつあるのが、歯がゆいのもそういうところで。

赤松:演劇は教育はどうしてるんですか? 直しはするんですか、誰かが? 坂手さんのシナリオに駄目出しはするんですか? 『MONSTER』の浦沢先生は、長崎さんっていうブレーンがいて、まず彼に見せるんですよ、ネームを描いたら。もしくは逆に、長崎さんが脚本を書いて、浦沢さんがネームを描くみたいな形で、必ずやりとりするというのに慣れているんです、マンガ家は。編集者と組んでやるということも。劇作家はもしかして完結しているんですか? 独りの中で。

坂手:これはもう現場次第ですね。プロデューサーとか、演出家とかと一緒に。

赤松:映画は切りますよね。ここ要らないからって、プロデューサーがバサッと。

:そういう場合もありますよね。

坂手:ただ、意外と劇作家は尊重されるケースも多いですね。

赤松:井上ひさし先生が書いたものは一言一句削られない。

青井:その暇がなかったから(笑)。

赤松:例が悪かった(笑)。

青井:劇作家と演出家を兼ねるケースが80年代以降、増えてるから、そこはやっぱりみんな力が鈍っていると思います。

坂手:あとやっぱりお客さんなんですよ。お客さんの反応を見てりゃ、ここがつまんねーなってことが判る。

:それはシビアにきます。

赤松:あ~、それはマンガでは、この回は読者アンケートが悪かったっていうことですね。


 演劇は集団創作?

:演劇の場合、稽古で、俳優とやりとりをしたりスタッフと相談している段階で既に「ここどうなの?」みたいなことが出たり、いけると思っていたら、これ全然面白くないなって、自分達で判断して変えていくっていう場合もあります。

赤松:その場合は、みんなで揉んで変更したものの権利はどうなるんですか? ある作品に対して、権利者が少ない方がオーファンワークス(孤児作品)になる確率も低くなるし。Jコミが何で絶版作をこんなにドンドン収録できるかっていうと、作者が全部権利を持ってるから、作者が「いいよ~」って言ったら、即、掲載できるんですよ。
シナリオの直しで、ほとんど半分位直されちゃったと、役者達に(笑)。その場合は権利はどうなるんですか?

坂手:協会員でその件で揉めた事例もありますよ。

福井:日本で著名な裁判が二つありまして、一つは「音楽座ミュージカル事件」といって、私が代理人をしたのですが、もう一つは「新宿梁山泊事件」註31)。いずれも問題になったのは、座付きの作家が1人で書いたのか、カンパニーみんなで考えて書いたのか、みたいな点です。これまでの裁判上は、座付きの作家が有利です。みんな意見は言っただろう、励ましただろう、揉んでやっただろう。でも、そのことと共同著作はやっぱり違う。そう簡単に、裁判所は共同著作は認めないので。


 お客さんはパトロン

赤松:「JコミFANディング」では、例えばこのセットでは鈴木みそ先生の絶版作品がPDFでダウンロード出来て、それは電子透かしっていって、誰が買ったか、メールアドレスなどが刻印されているので、ウィニーには流せないっていうのがあります。しかも、鈴木先生と飲める(笑)、っていうコースがあって、5人までで3万円なんですよ。それがCコースで、Bコースは鈴木先生の描いた色つきの生原稿、4枚セット1話分が、2万円。(Aコースの)PDFだけのやつは2千円なんです註32)。

福井:オフブロードウェイなんかこれに近いモデルですよね。出資してもらって、その代わり、初日一番いい席で観て貰い、終了後のパーティーで肩組んで、一緒に飲んで、っていうのをやってるじゃないですか。いわゆる「エンジェル」のモデルですよね註33)。

:歌舞伎の世界なんかもやってますよね。

福井:パトロネージですね。

赤松:Jコミが優れているのは、何一つ新規で描いてないんですよ(笑)。昔の作品だけで稼いじゃう。ノーリスク、ハイリターンですよ。


 演劇は再演が最大のビジネスモデル

:演劇も再演の機会が増えれば、以前書いたお芝居が残っていく。

福井:実は単一作品で世界の歴史上、最大の興行収入を上げた作品はどのジャンルから出ているかというと、演劇です。何かというと『オペラ座の怪人』註34)。映画で過去最大の興収を上げたのは『アバター』なんですけど、『アバター』の倍額、5000億円以上を全世界で稼いでいます。

:『オペラ座の怪人』はこの先もまだまだ上演されていきますよね。

福井:見られる作品より、歌われる作品、演じられる作品は強いんですよ。『ハッピーバースデートゥーユー』は著作権がまだ切れていないということになっていて、アメリカで年間2億円ほどの印税を稼ぐとされますね、未だに註35)。

坂手:日本の現代劇作家でクオリティを保ちながら一番稼いだ人というのは、ひょっとしたら、井上ひさしさんより秋元松代さんじゃないかという人もいます。定期的に商業演劇で年に何ヶ月か大劇場でやっていると相当、収入があるはずなんですね。演劇は、自由にできることと、儲かるチャンスもあるということを、両方アピールしていった方が良さそうですね。

[了]   



註31:「音楽座ミュージカル事件」「新宿梁山泊事件」
「音楽座ミュージカル事件」
音楽座の座付作・演出家だった横山由和氏と、ヒューマンデザインとの間で2002年から著作権確認訴訟が起きる。2005年に和解。
著作権判例データベース」の該当事件

「新宿梁山泊事件」
2007年、劇作家の鄭義信氏が劇団「新宿梁山泊」を相手取り、著作権侵害を理由に『それからの夏2007』の上演差し止めなどの仮処分を申し立て、新宿梁山泊が上演を中止することなどを条件に東京地裁で和解が成立した。
その後、劇団側は『それからの夏』及び『人魚伝説』が劇団の共同制作であることを主張し、自主上演権を求めて裁判所に提訴した。2008年、新宿梁山泊が提訴を取り下げることで実質的に鄭義信の勝訴になった。

鄭義信と新宿梁山泊戯曲「それからの夏」──「人魚伝説」著作権侵害事件──
本裁判の被告鄭義信氏自身と劇作家・日本劇作家協会専務理事の平田オリザ氏による、本裁判の報告文書です。

註32:「JコミFANディング」
例「鈴木みそFANディングSET

註33:「エンジェル」
北米論A アメリカの社会と文化100年 第1回 ブロードウェイ・ミュージカル入門

繁栄するブロードウェイ・ミュージカルは独特の経済原理に支えられている。一般の舞台はバッカーと呼ばれるスポンサーから資金を集める。プラン出来るとバッカーズ・オーディションを開催、プロデューサー、劇場主、スポンサーが集まる。 気に入った作品があると投資家が資金の提供を申し出る。こうした人々のことをエンジェルと言う。幸せを運んでくる心優しい天使だというわけである。この言葉は1990年代、ハイテクベンチャーを志す若者に受け継がれた。新しいアイディアでIT企業を起こし、気に入ってもらえたら投資家エンジェルが資金を投入する。 作品がヒットすれば投資した金額は際限なく戻ってくる。失敗すれば出資金は消えてなくなる。観客の入りが悪くてペイしなくなればその日のうちに上演が中止されてしまうのはこうした事情からだ。しかし週間の入場者数が公演の経費を上回るということになれば永遠に幕を開け続けることもできる。

註34:『オペラ座の怪人』最大の収入
オペラ座の怪人』は1986年10月、ロンドンのハー・マジェスティーズ劇場での初公演以来、世界30ヵ国、151都市、14言語以上で上演され、観客動員数は1.3億人を突破。全世界での総収入は56億ドル(約5,600億円)を超え、『アバター』や『タイタニック』『スター・ウォーズ』などを含めて、歴史上のすべての映画・演劇における最高の興行収入を記録。
http://boxofficemojo.com/alltime/world/

註35:「ハッピーバースデートゥーユー」毎年2億円。権利まだある。
「ハッピーバースデートゥーユー (Happy Birthday to You)」
世界で一番歌われている歌としてギネス・ワールド・レコーズに載っている。 1935年に登録した当時のアメリカ国内法では、最長でも1991年には著作権が消滅するはずであった。通常28年、更新により延長できるがそれでも最長56年で消滅する。
しかし、その間にアメリカ国内に於いては著作権保護期間の延長が行われたため、2013年現在もなお著作権は存在している。現在は米タイム・ワーナーが著作権を保持しており、著作権切れとなるのは2030年の予定である。



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