第20回劇作家協会新人戯曲賞選考経過

左から:川村毅(司会)、佃典彦、横内謙介、永井愛、マキノノゾミ、渡辺えり、鴻上尚史、土田英生
受賞作 角ひろみ『狭い家の鴨と蛇』

くるみざわしん『蛇には、蛇を』
角ひろみ『狭い家の鴨と蛇』
八鍬健之介『龍とオイル』
清水弥生『ブーツ・オン・ジ・アンダーグラウンド』
岡田尚子『さよならアイドル』

鴻上尚史、佃 典彦、土田英生、永井 愛、マキノノゾミ、横内謙介、渡辺えり
選考経過 川村 毅
審査員の面々は今回も元気であった。
『蛇には、蛇を』について、土田氏は「登場人物たちが自分たちの状況を自覚的であり過ぎる。説明過多」。横内氏は「大ファール。権力者側が書かれていない」。鴻上氏は「筆力がある。ユーモアもあって読ませるが、状況を説明し過ぎている」。永井氏は「もうひとつ展開がない。主人公がなぜ脱走したのかわからない」。
『狭い家の鴨と蛇』について、佃氏は「ホームラン。舞台設定がいい。登場人物たちの切なさ、哀しさが書けている。終わり方がすがすがしい」。渡辺氏は「センスもイメージもいい。なぜ『方丈記』を扱って近未来で書かなければならなかったのかが疑問。現実の悲惨さの前で『方丈記』の一節を口にすることなどできるか」。マキノ氏は「『方丈記』をもとにして書くという要請の応えとしてよくできている」。
『龍とオイル』について、永井氏は「なぜ1992年と2013年に設定したかがわからない。家族の場面の会話が足らない。家族の場面と不良の場面が分離している」。マキノ氏は「ふたつの世界の構成が上手い。新人と思えないほど上手い」。鴻上氏は「秀英さんが死んでいるのかどうかよくわからない」。佃氏は「ホームラン。最後のト書きは中国の血はいまでも残っているという咆哮だ」。
『ブーツ・オン・ジ・アンダーグラウンド』について、横内氏は「力のこもった戯曲でうまいが、弾まない。上崎という主人公がおもしろくない」。渡辺氏は「登場人物を、 書こうとするテーマにあてはめすぎているところが疑問」。鴻上氏は「アイデアはいい。作家になるか政治家になるかの境という問題が出てくる。政治的主張の背後にあるキャラクターをもっと書かなければ作家ではない」。佃氏は「作家が誰に向けて書いているのか、わからない。もっと自分に向けて書いたほうがいい。これだと今の政治に向けての反対表明としか読めない。もっとめちゃくちゃに書ければ。上崎がロボコップみたいになるとか」。永井氏は「ブラックな喜劇として読んだ。笑える。舞台の使い方も上手い」。マキノ氏は「痛快だった。アイデアが素晴らしい」。
『さよならアイドル』について、土田氏は「非コミュニケーションの状況が書かれている。コワイ」。マキノ氏は「正直よくわからなかったが、ゲロありイジメありで露悪的なところに作者の怒りを感じる。暴力に対する怒りが書かれている」。鴻上氏は「松尾スズキさんの影響が多大に読める。悪意だけ書きました、以上といった終わり方。この先をどう書くかが今や問題なのではないか」。横内氏は「居酒屋の外の世界が少しでも書かれていれば変わっていた」。
ひとり二作品を推すという第一回目の投票結果は、
休憩後は、おもに『狭い家の鴨と蛇』か『ブーツ・オン・ジ・アンダーグラウンド』かで議論になった。前者に関してはほぼ全員がその世界の構築の真摯さを認めたが、後者の政治的テーマの書き方、身障者の方達の書き方、見方、喜劇として読むべきかどうか、喜劇だとしてそう読めるように書かれているかといったことが、活発に議論され、興味深い時間となった。
二回目の投票はこの二作のどちらかを推すというもので、結果、
終了後の楽屋においても、審査員たちの議論は続いていた。
個人的な感想を言えば、政治的主張と文体の問題が取り上げられて活発に語られたことが実に興味深かった。これらのことは、現役の作家たちにも返ってくる問題であろう。
審査員の面々は今回も元気であった。
『蛇には、蛇を』について、土田氏は「登場人物たちが自分たちの状況を自覚的であり過ぎる。説明過多」。横内氏は「大ファール。権力者側が書かれていない」。鴻上氏は「筆力がある。ユーモアもあって読ませるが、状況を説明し過ぎている」。永井氏は「もうひとつ展開がない。主人公がなぜ脱走したのかわからない」。
『狭い家の鴨と蛇』について、佃氏は「ホームラン。舞台設定がいい。登場人物たちの切なさ、哀しさが書けている。終わり方がすがすがしい」。渡辺氏は「センスもイメージもいい。なぜ『方丈記』を扱って近未来で書かなければならなかったのかが疑問。現実の悲惨さの前で『方丈記』の一節を口にすることなどできるか」。マキノ氏は「『方丈記』をもとにして書くという要請の応えとしてよくできている」。
『龍とオイル』について、永井氏は「なぜ1992年と2013年に設定したかがわからない。家族の場面の会話が足らない。家族の場面と不良の場面が分離している」。マキノ氏は「ふたつの世界の構成が上手い。新人と思えないほど上手い」。鴻上氏は「秀英さんが死んでいるのかどうかよくわからない」。佃氏は「ホームラン。最後のト書きは中国の血はいまでも残っているという咆哮だ」。
『ブーツ・オン・ジ・アンダーグラウンド』について、横内氏は「力のこもった戯曲でうまいが、弾まない。上崎という主人公がおもしろくない」。渡辺氏は「登場人物を、 書こうとするテーマにあてはめすぎているところが疑問」。鴻上氏は「アイデアはいい。作家になるか政治家になるかの境という問題が出てくる。政治的主張の背後にあるキャラクターをもっと書かなければ作家ではない」。佃氏は「作家が誰に向けて書いているのか、わからない。もっと自分に向けて書いたほうがいい。これだと今の政治に向けての反対表明としか読めない。もっとめちゃくちゃに書ければ。上崎がロボコップみたいになるとか」。永井氏は「ブラックな喜劇として読んだ。笑える。舞台の使い方も上手い」。マキノ氏は「痛快だった。アイデアが素晴らしい」。
『さよならアイドル』について、土田氏は「非コミュニケーションの状況が書かれている。コワイ」。マキノ氏は「正直よくわからなかったが、ゲロありイジメありで露悪的なところに作者の怒りを感じる。暴力に対する怒りが書かれている」。鴻上氏は「松尾スズキさんの影響が多大に読める。悪意だけ書きました、以上といった終わり方。この先をどう書くかが今や問題なのではないか」。横内氏は「居酒屋の外の世界が少しでも書かれていれば変わっていた」。
ひとり二作品を推すという第一回目の投票結果は、
『蛇には、蛇を』 渡辺
『狭い家の鴨と蛇』 佃 横内 永井 渡辺 鴻上 土田
『龍とオイル』 佃 マキノ
『ブーツ・オン・ジ・アンダーグラウンド』横内 永井 マキノ 土田
『さよならアイドル』鴻上
『狭い家の鴨と蛇』 佃 横内 永井 渡辺 鴻上 土田
『龍とオイル』 佃 マキノ
『ブーツ・オン・ジ・アンダーグラウンド』横内 永井 マキノ 土田
『さよならアイドル』鴻上
休憩後は、おもに『狭い家の鴨と蛇』か『ブーツ・オン・ジ・アンダーグラウンド』かで議論になった。前者に関してはほぼ全員がその世界の構築の真摯さを認めたが、後者の政治的テーマの書き方、身障者の方達の書き方、見方、喜劇として読むべきかどうか、喜劇だとしてそう読めるように書かれているかといったことが、活発に議論され、興味深い時間となった。
二回目の投票はこの二作のどちらかを推すというもので、結果、
『狭い家の鴨と蛇』 佃 横内 マキノ 渡辺 鴻上 土田
『ブーツ・オン・ジ・アンダーグラウンド』 永井
となり、『狭い家の鴨と蛇』に決まった。『ブーツ・オン・ジ・アンダーグラウンド』 永井
終了後の楽屋においても、審査員たちの議論は続いていた。
個人的な感想を言えば、政治的主張と文体の問題が取り上げられて活発に語られたことが実に興味深かった。これらのことは、現役の作家たちにも返ってくる問題であろう。
*各審査員による選評は追って掲載いたします。
*第20回劇作家協会新人戯曲賞の総合情報はこちら。