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1997年度 PDF プリント メール

第3回劇作家協会新人戯曲賞

1997年度

後援 (株)ジャストシステム
 


一次選考通過作品一覧(23作品)
 

喜劇 町のはずれっこで 松越文雄
こころゆくまで。 門肇
月面コレクション -形而上学的千夜一夜 赤井俊哉
安らぎの風景 矢野あつし
水の中の天使’97 今井一隆
デッチあげ報道の作り方 山中正史
国定忠治外伝 二妾物語 お町とお徳 細谷尹
カイゴの鳥 なかじょうのぶ
真夏の遊び 吉池玲二
非常怪談 はせひろいち
白と黒 大野敏哉
男的女式 大森寿美男
生態系カズクン 泊篤志
THE CENTER FIELD 矢吹康夫
流行歌 高崎秀之
わが家の夕めし 品川浩幸
クライスト・アジア 西尾彰泰
AGE OF ”CHAIN-SAW” -ナイチンゲールの終わり 吉村八月
この藍、侵すべからず 長谷基弘
地球へのピクニック 高井鴎
紙縒り 手酌
湾岸線浜浦駅高架下4:00AM(土日除ク) 深津篤史
浅川町5丁目1番5号 芳崎洋子



最終候補作品一覧(6作品)
 

こころゆくまで。 門肇
カイゴの鳥 なかじょうのぶ
男的女式 大森寿美男
生態系カズクン 泊篤志
AGE OF ”CHAIN-SAW” -ナイチンゲールの終わり 吉村八月
この藍、侵すべからず 長谷基弘



受賞作
 

生態系カズクン 泊篤志




最終選考会は、1997年12月14日、紀伊國屋ホールにおいて公開で行われた。
審査員は、別役実、斎藤憐、清水邦夫、如月小春、横内謙介、坂手洋二、平田オリザ。

受賞作と最終候補作をすべて掲載した「優秀新人戯曲集1998」は、
ブロンズ新社から発売中(本体1,600円+消費税)。
ISBN4-89309-140-9 C0074


 


総評/選考経過



 

新人戯曲賞総評
                                  小松幹生


 最終候補作の6本を眺めてみる前に「優秀新人戯曲集1998」の末尾近くに出ている2次審査対象になった23本の作品を見てほしい。「喜劇 町のはずれっこで」「水の中の天使」「デッチあげ報道の作り方」「非常怪談」「わが家の夕めし」「国定忠治外伝」「地球へのピクニック」「クライスト・アジア」……。タイトルを読んで想像できるのはそのスタイルあるいは傾向の種々さまざまなことである。当たり前だと言えば当たり前のような気もするがそうではない。ひとつには審査のシステムが、十人の傾向の異なる審査員が二人一組となって一本の作品を読むことで、切り捨てるのではなくて掬い揚げようという姿勢をとっていることが功を奏していること。そしてひとつには、どの世界にも流行というものがあって、もちろん劇界にもあると思われるのだが、流行に乗っていると感じられる傾向の重なりが見えないほどに、独立独歩する個性豊かな才能が全国いたるところに実在するという事実があるということ。
 その中から残ってきた6つの作品は、当然のように見事に6つの異なったスタイルと表情をもって現れている。
 まずそのことに注目すべきだろう。
 ところで、ここで、少し中身に立ち入ってみると、吉村八月さんの「AGE OF CHAIN-SAW」の猥雑な迫力は近頃珍しい作風だった。概して他は精神が「やさしい」のが最近の共通点だと言えるとすると、この作品の乱暴な力はもっと注目されていいだろう。そして、なかじょうのぶ氏の「カイゴの鳥」の整理されていない語りの、整理されてないがゆえの力を感じとりたいと思う。
 さまざまに傾向の違うものが見事に集まっているといいながら、こう考えてくると、現代特有の共通項はやはり見えているのかもしれない。「作者の優しいまなざし」というのは、褒め言葉として、ずいぶん使われてきたし、そう言われて悪い気はしないかもしれない。しかし、果たしてそれはいつもいいことなのか。優しさは人を救えるだろうか。そのとき自分に対して疑いを持つべきだろう。
 今回は206本の作品が集まった。次回もそれくらい集まってくるとすると、審査員たちはなかなか大変だけれど、新鮮な気持ちをもって頑張ってほしいと、お願いしておきます。


 



選考経過・表彰式
                                 永井愛


 公開審査会は紀伊國屋ホール、こまつ座公演「マンザナ、わが町」のセットを借りて行なわれた。206本の応募総数に対し、入場者は約130人。この年末、こういう催しにと考えると、まあ、喜んでいい数字なのかも。
 審査員は別役実、清水邦夫、斎藤憐、如月小春、横内謙介、坂手洋二、平田オリザの各氏、司会は小松幹生氏。最終候補作6作を応募順に紹介しつつ、審査に入った。
 門肇氏の「こころゆくまで。」は警官と泥棒の一夜を描いた二人芝居。斎藤氏が「二分ごとに笑え、うますぎて困る」と述べたように、セリフや運びのうまさを認める審査員は多かったが、二人芝居の世界の狭さや、ストーリーの平板が指摘され、もうひとつ弾けた展開を望む声も出た。
 なかじょうのぶ氏の「カイゴの鳥」は母の介護に明け暮れる男の一人芝居。「奔放に自分流に書いている自在さが長所でもあり欠点」と清水氏。如月氏、平田氏も注文はつけつつ、作者独特のセリフのパワーには好意的。福祉政策の不備を直接的に訴える部分には演劇表現として疑問を持つ審査員も多かった。
 大森寿美男氏の「男的女式」は結婚三年を迎える若い夫婦の関係が主軸だが、「ストーリーより、時々のシチュエーションの意地悪さを楽しむ芝居」(横内氏)なのかもしれない。セリフや小道具が暗示するイメージでかなり引っ張るが、男女関係の描き方はステレオタイプとの指摘もあった。
 泊篤志氏の「生態系カズクン」は「死者を囲む家族の相関関係と旧家のニュアンスがだんだん明確になる構図がいい」(別役氏)「題名がいい」(清水氏)「ピランデルロ的面白さ」(斎藤氏)など、ほとんどの審査員が高く評価。さらなる注文として、「その先に何があるかと期待すると肩すかし」(坂手氏)「猫似のカズクンと唯一話せるウキサを頭の弱い設定にしたのは疑問」(平田氏)などの意見も出た。
 吉村八月氏の「AGE OF “CHAIN-SAW”」は「レイプ・殺人犯兄妹の絶望的青春をカッコよく描き、セリフの気のきき方も徹底している」と横内氏が熱烈に支持。後半の独白が悪業の言い訳めくのを難点とする見方が大半を占めたが、あまりの“ワル”ぶりに「作者の顔が見てみたい」(平田氏)との感想も。
 長谷基弘氏の「この藍、侵すべからず」は第二次大戦時、アメリカの強制収容所内での日本人美術家たちを描き、作品構造がしっかりしていてレベルが高いと別役氏、如月氏、坂手氏が支持。ただ、「なぜ美術家を選んだのかが、作品から立ち上がってこない」(如月氏)「時代や場所の設定をしながら、あえて日系二世らしくないセリフで書いたのはなぜか」(斎藤氏)などの疑問も出された。
 休憩後に投票。泊氏の「生態系カズクン」が別役氏、清水氏、斎藤氏、坂手氏、平田氏の5票を集め、すんなり受賞と決定した。
 「ラインゴールド」での忘年会と表彰式は終始なごやかな空気に包まれた。ジャストシステムの田中氏は「人間と機械のよりよい関係を研究したい。話し言葉に興味を持っている」と戯曲への関心を語ってくださった。出席した最終候補作の作者たちのスピーチは、
 泊氏「二次審査に残って正直びっくり。劇作家協会に入ろうかなと思う」
 門氏「(受賞は)てっきり自分だと思っていた。コントだと言われ、かえって嬉しい」
 大森氏「戯曲を振り返ると、あまりにも感覚を信じてやってきたかと思った」
 吉村氏「僕はこういう顔です。友達が少ないので友達になってほしい」
 なかじょう氏「一人芝居をモンモンとやってきた。6人の中に選ばれて光栄」
 作品の質も高まり、この賞が劇作家の登竜門となりつつあるのを感じる。金子和一郎氏はじめ紀伊國屋ホールの方々、こまつ座の方々のご協力に改めて感謝の意を表したい。
 
 

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