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『月いちリーディング』 報告レポート PDF プリント メール

ニューヨークやロンドンでは毎週のように行なわれている、戯曲のブラッシュアップのためのリーディングを、日本でも。
『月いちリーディング』は、「劇作家の育成の場」「新作戯曲と制作者の出会いの場」「観客の戯曲理解を深める場」として、劇作家・企画/制作者・観客のそれぞれに多くの発見と気付きをもたらすことを期した催しです。

概要・趣旨・応募方法・参観申込みについては、こちらをご覧ください。  
 

 第2回目('10/7月)   第1回目('10/6月)


  第2回リーディング 作者・ファシリテーター・参観者のコメント

  『防波堤のピクニック』作者/上原英司 (談)
 自分のような新人が、これだけの方々に直接本の感想を伺える機会は、今までありませんでした。上演と異なり、演出に対する感想が支配的にならず、戯曲そのものを評価していただけける場は新人劇作家にとって非常に有意義なものです。
 とにかくこのディスカッションの特徴は、最初に“ほめる”ことですね。作品の粗を探すよりも、実はほめることのほうがよっぽど難しい。それにより作者自身が「あ、こういうところを面白いと思う人がいるのか」と気づいたり、参観の皆さんが「あ、こんな見方があるのか」と思うことは、実は辛口の批評と同様の発見があると思うのです。
 今後、演出家を入れることも考えられるのではないでしょうか。月いちリーディングには具体的な演出というものはありません。従って、最大の演出要素はキャスティングです。例えばドラマターグのような形で演出家が入り、この戯曲をシンプルかつ効果的に伝えるにはどんなキャストがいいかを作者とともに考えてゆく。作者は上演経験が少ない新人が多いわけですから、演出家とのこの打合せは非常に創造的な時間となるはずです。
 今回、この場を与えてくれたことに感謝致します。本当にありがとうございました。

  ファシリテーター/長谷基弘 (談)
 6月と7月、2回のリーディングを終えて、参加者の皆さんが想像以上に意見を言ってくださるという印象。あまり活発に意見が出てこないことを想像していたけれど、そうではなかった。
 アメリカでのこういうリーディングでは、本当にいい作品の場合、ひとりの人が意見を言ったときに、それに対して反論が出たりする。素晴らしい作品だと、誰かの発言に反論が出て、さらに反論が出て、会場を二分しての大激論になることもある。逆に作品があまりよくないときは、一方的な発言、それもいいことだけ言って簡単に終わるんです。ここがよくないという意見も出て、参加者同士の議論が活発になるのが、作品に手ごたえがあったときの特徴。
 今後はそういうふうに、参観の人同士のディスカッションが促されるようなやり
かたも、進めていけたらと思う。

  6月7月と続けてご参観の方 (談)
 僕は芝居を観るのは好きだけれど、リーディングはそんなに好きではなかったんです。でも前回、自分があまり面白くないと思った作品に対しての、別役さんや永井さんや鈴木さんや、それに他の方々の意見がすごく面白かった。リーディングを聞いているだけでそんなにたくさんのことが読み取れるのかと、とても驚きました。それぞれ違う見方からの発言だったのも面白かったです。
 正直に言えば、リーディングを聞くことよりもディスカッションを聞くことが面白い。作品に対していろいろな角度から見る人たちの話を聞きたくて、今回も参加しました。
 今回の作品は自分にとってわかりやすく、面白い芝居でした。だからディスカッションを聞いて「ああそうだよな」と感じることが多かったです。それはそれで整理されていいのですが、前回のほうがインパクトは大きかったかもしれません。「こんなふうに読んでいるんだ…」とか、「え、こんな考えが?!」とか、衝撃でした。


  第2回目 レポート

 6月から始まった『月いちリーディング』の第2回目は、7月31日(土)に開催された。
 担当劇作家は川村毅と坂手洋二。ゲストとしてニューヨーク在住の演出家・河原その子氏が参加。土田英生も姿を見せたほか、参観席には工藤千夏や丸尾聡も座り、劇作家協会ならではの催しとなった。

 選出された作品は、上原英司氏の『防波堤のピクニック』。自身の出身地である茅ヶ崎という土地から着想を得た、「目の前には海がひろがっているのにそこから出ていくことのできない閉塞感。そして若者同士の、会話のキャッチボールのないコミュニケーション」(言:上原英司)を描いた作品だ。

Image 舞台と客席のように俳優と参観者の席を対面で組んだリーディングのあと、椅子を大きな円を作るように並べ直してのディスカッション。ファシリテーターの長谷基弘の進行により、アーティストの優れた点を伸ばすことを目的にしたリズ・ラーマン方式に基づいて行なわれる。
 挙手の必要なく次々と自由に発言するくつろいだ雰囲気のなか、まずは参観者から、リーディングを聞いてよいと思った点が挙げられてゆく。この人物のこういうところが好きだ、あのせりふが気に入ったなど、通常の観劇後にはわざわざ口にしないような小さな点についての発言も、歓迎なのが特徴だ。
Image 次に作者から参観者に向けて、聞いてみたいことを投げかける。「この作品は人物の関係性の説明を排除しているのだが、聞いていて設定がわかっただろうか」(言:上原英司)との質問だった。関係性を明らかにしないところが、『防波堤のピクニック』の特徴であり面白さ。同時にそれこそが、作品の意匠を整えて戯曲をよりよくするために、考えていくべきことの起点でもあったので、非常に活発なディスカッションとなった。そして自然に、参観者から作者への質問、批判的なことを含めての批評へと進んでゆく。
Image リーディングをした俳優もディスカッションに参加した。舞台では作品の内部世界に生きているように見える俳優が、その世界の外に立って戯曲への感想や意見を公けに述べるのは、おそらくとても珍しい。「本当に誰にも言葉を振らずに自分のことだけを喋っていて、それが面白かった」等、作者の狙いであるコミュニケーションのなさについて、演じた俳優ならではの実感に満ちた感想が出される。粗野な言葉遣いが特徴的な作品だったので、せりふへの親和感あるいは違和感についての発言もあった。

 19時開始(*開始時刻は18時の場合もありますのでご注意ください)の『月いちリーディング』が終了したのは21時半。1時間強のリーディングから、短い休憩を挟んでのディスカッションは1時間以上に及び、極めて刺激的な会となった。

 *写真/左上:(左から)篠原久美子 上原英司 長谷基弘
       右中:川村毅
       左下:(左から)坂手洋二 河原その子 土田英生


次回の開催は8月28日(土)です。9月は『月いちリーディング』はお休みですが、10月は30日(土)に開催します。
戯曲応募締切は、それぞれの開催月の10日。劇作を志している多くの方々のご応募をお待ちしています。
また、新しい戯曲・新人劇作家との出会いを求める企画・制作者の方々、戯曲がどう作られるのかにご興味をお持ちの観客の方々のご参観も、心からお待ちしております。演劇に興味のある人にとって、ディスカッションはおそらくとても楽しいもの。ぜひ足をお運びください。




  第1回リーディング ゲストと担当劇作家の感想 ~報告書(リーディング部作成)より抜粋

別役実
 第一回目のリーディング、なかなか良かったと思います。私たちからはともかく、一般の参加者からかなり活発に意見が出ていたのが、何よりも好ましく思えました。出演者も、かなりのベテラン揃いで、充実しており、安心して聞くことができました。

永井愛
 劇作家にとって意義深いというだけでなく、なかなかに面白い試みだったと思った。参加者たちは、リーディングされた作品が、よりいっそうの向上を目指して「進行中」であることをよく理解していて、作者のオープンな態度に敬意を払い、何かの役に立ちたいというやさしい緊張感に満ちていた。コメントする側だった私自身、会場からの意見で自分の考えが整理された。一人の発言が、他の人に発見を促し、次第に核心が明らかになるといういい連鎖が生まれかけていたように思う。
 こういう企画の進行、時間配分は難しいが、作者だけでなく、観客のブラッシュアップにつながる可能性を感じた。

鈴木聡
 「月いちリーディング」の第一回、意見も活発に出て良い会になりました。新しい作家さんの新作に出会えて勉強にもなった。
 だいたい戯曲というのは読むのに骨が折れますね。「これ誰が喋ってんだっけ?」といちいち確かめながら読まなきゃいけないし。それを役者さんたちがやってくれるとスーッと頭に入る。読む苦労がないぶん作品の解釈に想像力を使えます。
 終了後、作家さんや役者の皆さんとカフェでビールを飲みながらお話できたのも楽しかった。戯曲に関心がある人同士の交流の場にもなっていくと思います。



  第1回目 レポート

 '10年6月26日(土)。第1回目の『月いちリーディング』は座・高円寺のけいこ場2で行なわれた。

 18時からの公開リーディングを前に、今回の協力劇団である燐光群のメンバーを中心とした俳優たち11人が集まったのは13時。当協会リーディング委員の篠原久美子と長谷基弘による、リーディング方法などについて説明と簡単な演出を受け、俳優たちは稽古に入る。事前に戯曲を読んでいたとはいえ、作家が新人であるだけに先入観なく、まっさらな状態でせりふに向かう。
 今回選出された2作品は、いずれも未発表未上演。せりふが俳優により立ち上がったのはこれが初めてだ。
 稽古に立ち会ったふたりの若手劇作家は。
紙の上では立ち上がって来ないもの、見えなかったことが、せりふとなって発されることで、ずいぶん意識できました」(中澤日菜子:報告書より)。
言葉がぴしぴしと音をたてて砕ける。燐光群の役者さんたちとの稽古で、私はその音を聞きました」(楠原セツ:同)。

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 公開リーディングの参観者は約30名。冒頭、リーディング委員から趣旨と進行についての説明が行なわれ、続いて当協会会長の坂手洋二からの挨拶。ニューヨーク・シアター・ワークショップのリーディングを参考に、この有為な企画が立ち上げられたことが話された。
(写真中央は挨拶をする坂手洋二。その横に篠原久美子と長谷基弘。後姿は会場をぎっしり埋めたご参観の方々)。

 第2回目からは1本のみのリーディングとなるが、今回はタイプの異なる2本が並んだ。初めに読まれたのは楠原セツ氏の『喫煙所』。「会話の横すべりが面白く、センスある作品で、作品も劇作家も成長の余地が大きい」(篠原久美子:報告書より)ことから取り上げられた。2本目の中澤日菜子氏の『海待ちノ月』は、「幻想世界を現代的なタッチで描いた力のある作品で、こうした力のある若手劇作家を広く紹介する意味も込めて」(同)の選出。

 1本のリーディングが終わるごとに行なわれたディスカッションは、ニューヨーク・シアター・ワークショップで採用されているリズ・ラーマン方式に則っている。アーティストの持つ優れた点を伸ばすことを目的とした批評方式で、4段階のプロセスを踏むものだ。
  1.参観者からポジティブな感想・意見を述べる
  2.作者の側から聞いてみたいことを参観者に質問する(シンプルなものに限る)
  3.参観者の側から聞いてみたいことを作者に質問する(シンプルなものに限る)
  4.批判的なものも含め、忌憚のない意見・感想・質問を述べ合う
 作者の希望によっては途中の段階でやめることもできるが、今回は4段階目まで進み、忌憚のない意見が交わされた。
 このディスカッションのよさは、単独の講師の講評とは異なる形の、多角的かつ重層的な意見が聞けること。ひとりの参観者の意見に対して違う角度からの意見が出て、それを受けてより深い意見が上がるなど、多くの見方が提示された。担当劇作家同士でも、「そういう方法も確かにあるだろうけれど、自分としてはこちらのよさを活かしたほうが…」等のやりとりがあり、作者のみならず参観者にとっても充分に興味深いだろうもの。

 まだ周知の浅い催しだが、より多くの方々のご応募とご参観をお待ちしたい。
 どうぞよろしくお願い致します。
 



 
 

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