選出作の作者たち
月いちリーディングに寄せて




西 史夏    鈴木アツト    中川よしの    南出謙吾
月いちリーディングとは   東京詳細   大阪詳細



 西 史夏
  それは<希望>のほかに思い当たる言葉はないのです
 

 2013年1月『林檎幻燈』
ゲスト:横内謙介、詩森ろば、早船聡
コーディネイター:篠原久美子 ファシリテイター:長谷基弘
出演:岩戸秀年(唐組)、甲津拓平(流山児★事務所)、河野洋一郎(南河内万歳一座)
   阪上善樹、清水泰子、中山マリ(燐光群)、日榮春華(オフィス薫)
   洪明花(ユニークポイント)、丸尾聡(世の中と演劇するオフィスプロジェクトM)、
   みやなおこ(演劇企画ユニットDONNA・DONNA)

 ── 書く意識の転換点となった日
 40歳の誕生日まで残すところ半年を切り、30代を振り返ってみると『林檎幻燈』という処女長編戯曲は、いつの間にか私にとって名刺代わりの代表作になっていました。「月いちリーディング」で取り上げていただいいたのが2012年1月、その成果も追い風となり、劇団太陽族によって2013年6月に上演されました。
 「月いち」で『林檎幻燈』が声に出して読まれたとき、頭の中でイメージしていた世界が目の前に現れた事に深い感動を覚えました。一方ディスカッションでは、自分が戯曲に込めた思いが案外人には伝わらないという事実を痛烈に感じ、その後「他者に手渡す」作劇を意識する転換点となりました。表現する人間と受け取る人間がいて、はじめて演劇という場が成立することを身をもって学んだのです。

 ── 出演者との出会い、観客との出会い
 この時の観客はそうそうたるメンバーでした。円城寺あやさん…西山水木さん…憧れの舞台女優がひしめきあっていました。そして、主役の少女役は関西を代表する女優の一人であるみやなおこさん。「月いち」での出会いが縁となり、円城寺さんには映画『ブーケ~a bouquet~』の主演を、みやさんには日本劇作家大会2014豊岡大会において、こうのとり短編戯曲賞受賞作『Bridge』の朗読をしていただくことになりました。「月いち」で私という作家を紹介していただいたことが、細々とではありますが、わらしべ長者的に現在の演劇活動につながっています。

 ── 書き続けるために立ち返る場所
 <生命的存在としての意味を問おうとする時には、その社会の枠をなくしてみなくてはならない>と太田省吾さんが書き残していますが、私といえば書き始めて6年経った今も、枠をなくすことができているのかいないのかわからぬまま、地味に戯曲を書き続けることしかできずにいます。
 カーテンを閉めきって、真っ暗闇のなか上演されるかどうかもわからない戯曲を書いていると、ふと「30代を棒に振ってしまったんじゃないか…」という思いに囚われる時があります。けれど、「月いちリーディング」とそこで出会った人たちを思い出すと、上演のチャンスが見えてきます。お客様が見えてきます。そして、また書き続ける勇気が出てきます。それは私にとって、<希望>のほかに思い当たる言葉はないのです。


リーディングフェスタ2015戯曲に乾杯!
短編戯曲リーディング+ブラッシュアップセッッションより

左から、山田裕幸、篠原久美子、土田英生、西史夏

  西 史夏 (にしふみか)

1975年生まれ、兵庫県伊丹市在住。大阪音楽大学演劇部劇団「調」出身。伊丹想流私塾第14期及びマスターコース5期・6期卒塾。日本劇作家協会会員、クオークの会会員。13年『a Bouquet~ブーケ~』で第6回富士山・河口湖映画祭シナリオコンクールグランプリ受賞。14年『Bridge』で第1回こうのとり短編戯曲賞最優秀賞受賞、『ナイト・ウィズ・キャバレット』で第2回せんだい短編戯曲賞大賞受賞、『林檎幻燈』で第21回OMS戯曲賞最終候補。
<ブログ 椿座通信 http://ameblo.jp/24fumika/




 鈴木アツト
  ゲスト劇作家の言葉は、
  「人物」と「形式」に対するどでかい指標となっている


 2012年6月『グローバル・ベイビー・ファクトリー』
ゲスト:永井愛、谷賢一
コーディネイター:丸尾聡 ファシリテイター:山田浩幸
出演:赤澤ムック(黒色綺譚カナリア派)、IKKAN(テアトルエコー/オフィス怪人社)、
   枝元萌(ハイリンド)、大谷亮介、おーみまみ(アズリードカンパニー)、
   岡崎友範、帯金ゆかり、坂本鈴(劇団だるめしあん)、重田千穂子、
   西田夏奈子、宮本奈津美(味わい堂々)
 2013年6月『匂衣〜The blind and the dog〜』
ゲスト:松田正隆、黒沢世莉
コーディネイター:中津留章仁 ファシリテイター:夏井孝裕
出演:宇宙、鶴牧万里、寺本佳世(青年劇場)、広田豹(ブルバキプリュス)、
   丸本陽子(Dance Company MKMDC)、山田奈々子



 ── 戯曲の勉強は一人ではできない
 「戯曲は一人で書くもの。劇作家は(執筆の)孤独と向き合うべきだ。」確かにその通りだし、私も強くそれに同意するのだが、戯曲の勉強は一人でやらなくて もいい。いや、むしろ一人ではできない。今まで一本も戯曲を読まずして、戯曲を書いた劇作家がいるだろうか? 多くの先達たちの処女戯曲は、それ以前の戯曲読書というインプットがあればこそだろう。

 ── 作家としての矜恃
 月いちリーディングに、短期的な成果を期待してはいけない。戯曲のブラッシュアップ?たった2時間弱のディスカッションで戯曲がうまく書き直せれば苦労しねえよ。まあ、普段、出会わないようなベテランの俳優が、自分の戯曲を読んでくれるのは嬉しい。そういうミーハー的な喜びはあるけど、ブラッシュアップ効果はほとんどない。だって、ちょっと言われただけで、簡単に戯曲を変えてしまったら、あんたの作家魂はどこにあるの?ってことになるでしょ? けれど、それでも私は「月いちリーディング」をおすすめします。特に20代の若い劇作家に。

 ── 戯曲を書くための指針を得る月いち
 私が、月いちリーディングで得たものは、「おすすめの古典」でした。それは、終わった後の飲み会で、ゲストの劇作家がおすすめしてくれたんだけど、どういう聞き方をしたんだろう?影響を受けた戯曲とかありますか?とかって聞いたんだったかな? 永井愛さんは、ピンターの『夜遊び』を挙げられて、「平面的人物」を書いちゃいけない、「球体的人物」を書かなきゃいけないって言ってくださった。松田正隆さんの時は、メーテルリンクの『室内』『群盲』を挙げられて、「映画が生まれる直前ぐらいの時代の劇作家は、演劇でしかできないことを模索していた」みたいなことを言ってくださって、このお二人の言葉は、私の中で、「人物」と「形式」に対する、どでかい指標になっております。
 要は、「月いちリーディング」からは、ブラッシュアップだけでなく、書き続けるための「勉強方法」を学んでください。

鈴木アツト (すずきあつと)
1980年東京都生まれ。03年に劇団印象-indian elephant-を旗揚げ。10年より韓国演劇人との共同制作を開始し、その第一回目の作品である『匂衣〜The blind and the dog〜』で第10回AAF戯曲賞最終候補。同作品で12年に韓国の「密陽夏公演芸術祝祭」「居昌国際演劇祭」に招聘される。12年に『青鬼』で若手演出家コンクールの優秀賞・観客賞。同年に『グローバル・ベイビー・ファクトリー』で 第18回劇作家協会新人戯曲賞最終候補。15年に国際交流基金のアジア・フェローシップでタイに2ヶ月間滞在。同9月より文化庁・新進芸術家海外研修制度でロンドンに1年間滞在予定。
<劇団印象-indian elephant- http://www.inzou.com




 中川よしの
  私の演劇人生のエポックメイキング


 2015年5月『中の人』
ゲスト:長田育恵、土田英生
コーディネイター:丸尾聡 ファシリテイター:瀬戸山美咲
出演:小山貴司(世の中と演劇するオフィスプロジェクトM)、
   佐藤みゆき、橘花梨、山口智恵


 ── 地域からの参加
 「なぜ人は演劇に魅了されるのか?」
 その答えに素手で触れた一日になった。2015年5月30日土曜日、「月いちリーディング」に長野県長野市から“作者”として参加した。始まる前は「立ち直れないほど酷評されるかも」と不安だった。だが蓋を開けてみたら、それはこの上ない幸福な時間となった。

 ── 贅沢なリーディング、踏み込んだディスカッション
 まず応募作『中の人』のリーディングをしていただいたのだが、演じることのプロである出演者の皆さんによって、声になり言葉になったことに鳥肌が立った。高水準のリーディングだったから、逆に自分の戯曲の未熟さにも気が付けた。
 その後、休憩を挟んでディスカッション。当たり障りのない感想ではなく一歩踏み込んだコメントばかりで、さらには技術的なアドバイスももらえた。私のように生き辛さを感じている人間が書くネガティブな作品でも、演劇にはそれを受け入れる器があるという言葉にはハッとしてグッときた。
 この催しに応募してよかったのは純粋に「演劇が好きだ!」という熱意ある人たちにフラットな立場で助言をもらえたことだろう。長野に限らず地方の演劇界には良い意味でも悪い意味でも“馴れ合い”があると思う。だがこの「月いちリーディング」にはそういうものが一切関係のなく、“外の人”からの忌憚のない意見を聞けて、大切な財産となった。

 ── 立場を超えて存分に演劇を語れる場所
 戯曲を書くことは孤独だ。心が折れそうになることもあるが、それでも書き続けようと決意した。あの場に集まった人たちは演劇に夢中で素敵だなと感じ、そんな人のそばにいたいし、そんな人と関わり続けたいと思ったから。交流会という名の飲み会にも参加させていただいたが、嬉々として演劇について語る姿を見てその思いは強くなるばかりだった。
 貴重な出逢いをくださった関係者の方々に大いに感謝する。勇気を出して応募して本当に良かった。私の演劇人生のエポックメイキング的な日になったことに間違いはない。

  中川よしの (なかがわよしの)
1975年、石川県生まれ長野県育ち。躁鬱病のため就労支援施設に通いながら社会復帰を目指す。2008年から2009年に4本の作品で役者を経験後、戯曲に興味を持つ。2011年度劇作家協会新人戯曲賞に応募し『クビナツ』で1次選考通過。そのほかの作品に『気が狂いそうなほどの赤。』、『27の誰』など。長野市のアートスペース『ネオンホール』のブログで『週刊中川よしのの400字』という掌編小説を連載。現在、妻や娘、猫と長野市に暮らす。
<週刊中川よしのの400字 http://www.neonhall.com/blog/400/



 南出謙吾
  高い目標、貪欲さを持っていけば、
  それに答えてくれるエネルギーがこの場にはあります


 2014年1月『終わってないし』
ゲスト:松本修、長田育恵
コーディネイター:石原燃 ファシリテイター:丸尾聡
出演:岡森諦(扉座)、多根周作(ハイリンド)、西尾友樹(劇団チョコレートケーキ)
   舞山裕子(劇団昴)、横澤有紀(世の中と演劇するオフィスプロジェクトM)
 2015年6月『ずぶ濡れのハト』
ゲスト:桑原裕子、前川知大
コーディネイター:中津留章仁 ファシリテイター:長谷基弘
出演:板倉哲(青年劇場)、枝元萌(ハイリンド)、小野寺ずる(◽︎字ック)、
   佐藤達(桃唄309)、志水衿子(ろりえ)、高橋洋介(TRASHMASTERS)、
   竹田まどか、森尾舞(俳優座)、ゆかわたかし(昭和芸能舎)




── 職場で「月いち形式」のディスカッション!?
 これまでに二度、月いちリーディングに作品を取り上げていただきました。そのどちらもが、取り上げていただいた戯曲にとっても、劇作家としての自分自身にとっても、明確に潮目を変える一日となりました。あまりに衝撃的なので、勝手に自分でこっそり月いちリーディングを企画してしまおうかと思う位です(いいのでしょうか・・・)。実はすでに職場で「戯曲」ではなく「組織運営の戦略戦術」なんて大げさなものを題材にして、類似のことをやってしまいました。いやこれ、とても好評だったんです。

── ゲストや参加者の意見を、自分で整理整頓していけば…
 答えが一つではない、人によって受け取り方が違う、好みも違う。そういう類の題材だからこそ、こういった研鑽の場が必要とされ、生まれたんだと思います。自分が掲げた課題について、熟練のゲストから初めての参加者という幅広いいくつもの脳みそが、一緒に考えアイデアをだしていくのです。もちろん、的外れだと思ってしまうものや、受け入れ難いと思ってしまうものもありましたし、理想論だと思ってしまうものもあります。それでも、それらを紡ぎ合わせ整理整頓することで、自分の強みに自覚的になり、自分の弱みの乗り越え方のヒントを手に入れることができました。「自分の」というのは、「戯曲」と「劇作家としての自分」の両方です。

── 目的意識を明確にもって臨むべき「月いち」
 ぜひ、月いちリーディングを体験して欲しい。大切なのは、目的意識を明確に持っておくことだと思います。高い目標、貪欲さを持っていけば、それに答えてくれるエネルギーが、月いちリーディングの場にはあります。上演をしたことのない劇作家でも、戯曲賞の受賞経験のある劇作家でも関係ななく、戯曲や劇作家の、さらなる魅力を引き出すきっかけになるはずです。

── ここから上演へ!
 また、月いちの場を通して、多くの俳優や劇作家をはじめとるする演劇関係の方々や、観客と出合えること、自分の文体を体験して頂けたことも、ブラッシュアップの成果とまったく同じく、月いちリーディングを通して得られる宝となりました。上演に向けての協力者が名乗りを上げてくれたりもしました。私はこれで東京での上演への道筋を立てることができたのです。

  南出謙吾 (みなみでけんご)
1974 年、石川県生まれ。99年に大阪に移り「劇団りゃんめんにゅーろん」に所属し、2002年より座長。04年以降は脚本・演出も手がける。08年『カラベラの踊る夜に』で大阪春の演劇祭り主演男優賞。同年『みそ味の夜空と』でOMS戯曲賞最終候補。『ちゃんとした夕暮れ』は、10年の第AAF戯曲賞と11年のOMS戯曲賞の最終候補となる12年『終わってないし』でAAF戯曲賞最終候補。13年の東京転勤に伴い劇団活動を休止。15年、東京を新たな拠点として「らまのだ」を立ち上げ。伊丹想流私塾マスターコース修了。戯曲セミナー修了。
< らまのだ https://lamanoda.amebaownd.com



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日本劇作家協会プログラム

2017年度のプログラム(全11企画)

11月2日(木)〜21日(日)
カムカムミニキーナ
『>(ダイナリィ)
〜大稲荷・狐色になるまで入魂〜』<

11月17日(金)〜26日(日)
燐光群
『くじらと見る夢』(仮)

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