── 熊本の演劇状況 Vol.1──
 <九州支部 役員ミーティング レポート>


九州支部 役員一同 (執筆:支部長 泊 篤志)    


 昨年立ち上がったばかりの九州支部ですが、立ち上げたものの、なかなかメンバーが集まれず、活動計画についてもメールのやり取りでしか進行していませんでした。
 そんな中、熊本・大分で大きな地震があり、まずは災害の大きかった熊本に、役員だけでも集まってその現状を見ておこうと、初の役員ミーティングを7月12日、熊本で行いました。


  熊本の劇団の方とともに益城町へ ──

 被災地の案内は、熊本に拠点を置く劇団「ゼロソー」の松岡さんにお願いしました。松岡さんは実家が地震で住めなくなり、現在は仮設住宅に住まれている方です。
 我々はテレビなどの報道でもよく紹介されている益城町へと向かいました。車で向かう途中から、屋根をブルーシートで覆われている家、崩壊している家などが増えてきます。そして最も被害が大きかった地域に到着。家々が崩れている映像はもちろんテレビなどで見ていたものの、幾つもの家が次々と崩壊している様子を目の前で見て、何とも言えない不条理さに圧倒されました。またこれらの家が「あと2年くらいかけて撤去していく」という状況に、先の長さを感じずにはいられませんでした。
 避難所の様子も見ました。あと何年経てば被災者の方たちは自分の家に帰れるのだろう?この風景を見ながら、同じ九州に居ながら、どこか他人事でなかったか?と自問しました。




被害の大きかった地域・益城町の避難所に向かう松岡優子さんと九州支部役員。
正面に見える建物は避難所のひとつ・交流情報センター。
益城町では14か所で1,553名が未だ避難所生活を送っている。
(2016年7月16日現在)




益城町にて。
1階部分が潰れ、全体が大きく崩れた状態のままになっている家屋。
町を訪れた日は地震発生から3か月を間もなく迎えようとする時期で、
被害家屋の公費による解体・撤去工事が始まったころだったが、
町内には未だ同様の光景がいたるところで見られ、
復興への道のりの遠さが思われた。






益城町にて。
斜めに大きく傾いた家、屋根瓦が落ちたり、
壁や窓ガラスが壊れた家がそのままの状態で連なる。
家の中に生活の跡が見えるのが痛々しい。




文化会館の事業は中止に ──

 次に益城町にあるホール“益城町文化会館”を訪問しました。
 このホールは基礎工事をしっかりやっていたお陰で建物が大きく壊れることは無かったそうです。それでもロビーの天井が崩落するなどすぐに使える状態ではなく、再開に向けて改修工事の真っ只中でした。もちろん開催予定だった事業は中止となり、今は「避難所への演奏等の慰問」「運動指導等のボランティア活動」などの申し出窓口となっていました。

益城町文化会館にて職員さんから施設の被害状況の説明を受ける。
もともと基礎工事が丁寧になされていたことと、
東日本大震災後、ホール内の耐震設備を強化していたため、
ホール内の被害は最小限に抑えられたとのこと。





益城町文化会館ホールロビー。
7月24日(日)に「平成28年熊本地震益城町慰霊祭」が予定されており、
急ピッチで工事が進められていた。
ロビー天井が大きく崩れたため布で覆い、仮設の蛍光灯が取りつけられていた。
写真奥、大きなガラス窓も割れてしまったため、壁のように塞いである。






益城町文化会館の職員さんから地震直後の被害状況の写真を見せていただく。
実際に見せていただいたホール内やロビーのほか、
舞台機構の被害状況など、詳細な記録が残されていた。
また、車が大渋滞して会館に到着するのも大変だったこと、
指定避難所ではないが地域の方が避難して来られ対応したことなど、
様々なご苦労を経験されていた。





益城町文化会館裏手。斜面が崩れて危険な状態。
その向こうには崩れた家々や屋根を覆うブルーシートが点在しており、
被害の大きい地域であることが伺える。





益城町文化会館内に設置されていた震度計。
益城町役場の建物が危険な状態であるため、こちらに設置されているとのこと。
南相馬市からやってきたものだった。




  演劇上演がほとんどない熊本で ──

 最後に、案内してくれたゼロソーの松岡さんらが中心となって運営している、熊本の小さな劇場 “花習舎(かしゅうしゃ)” にも行きました。
  ここではこの秋に開催する演劇祭が昨年第1回の開催の時に大きな予算源となった熊本県の助成金の募集目処が立っておらず資金集めに苦労しているとのことでした。まだ使えない公演会場が多く、小劇場系の演劇公演ですらほとんど上演されていない熊本で、小さくとも生の舞台を観てもらおうと頑張っている劇場です。今はクラウドファンディングで演劇祭を成立させようと努力している真っ最中でした。
 これをお読みの皆さま、熊本の被災された方々への協力とともに、少しでもよいので“花習舎”の活動を援助していただけると有難いと思います 。(花習舎クラウドファンディングについては、こちらを https://readyfor.jp/projects/8241 ご覧ください)。




花習舎(かしゅうしゃ)にて。
松岡優子さんより、地震発生時の様子やその後の生活、
熊本の演劇状況などのお話を聞かせていただく。
写真右・松岡優子さん(劇団ゼロソー・女優/制作)。
自身も仮設住宅での生活を送りながら、演劇活動や避難所訪問活動を続けている。



 地震発生から3ヶ月を過ぎ、メディアの報道も減っていく中、被災地への支援はこれからが正念場なのだと感じました。九州支部では今年度より少しずつ支部の事業を実施してまいりますが(その内容については決まり次第お伝えします)、同じ九州の仲間のために何がやれるのか、先の長い被災地のことを、継続的に心に思っていなくては…と感じました。
(了)  
2016年7月19日  





九州支部役員 初ミーティング。

九州支部役員。
左から、理事:福田修志(F’s company)、支部長:泊篤志(飛ぶ劇場)、
事務局長:池田美樹(劇団きらら)、副支部長:永山智行(こふく劇場)。

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